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アメリカの糖尿病診療事情

2003.11.28


 11月2日より1週間アメリカ、サンフランシスコの糖尿病センターを訪問し研修をしてきました。サンフランシスコの糖尿病センターはカルフオルニア汎大平洋医療センター(CPMC)の1部門で、医療センターには循環器、呼吸器、癌、その他の専門別の診療部門があり、内容が充実した大きな総合病院と考えてよいでしょう。糖尿病については糖尿病診療部門と看護管理部門の2つからなっています。しかしこの看護管理部門は医療保険でまかなわれて収入をえており、昨年は黒字だったので職員はクリスマスボーナスをもらったそうです。

 看護管理部門の糖尿病療養指導士(CDE)は看護婦5名、栄養士4名です。この部門は黒字をつくるだけあって大変忙しい職場です。どうして忙しいかというと、医師がおこなう看護管理(インスリン注射、自己血糖測定、栄養指導、病状説明など)を彼女たちがやるからです。当然CDEの看護管理した行為には保険診療費がはいります。しかしCDEに対する特別手当てはありません。

 アメリカの医療は総べて民間保険で統括されています(勿論開業医師の自由診療もあります)。検査、治療、在宅看護、患者教育、給食は民間保険会社と相談しながらおこなわれます。患者さんがどこの保険会社と契約し、どの程度の医療行為までカバーされるかいちいち尋ねて確認する必要があります。またおこなった医療行為はその都度書類で報告しなければ医療費が入ってきません。保険会社と患者毎の医療の問い合わせ、報告が大変な仕事だと言っています。

 基本的には患者は3ヶ月毎に受診して投薬を受け、血糖値、HbA1cなどの一般検査が
あり眼底検査、心電図、胸部写真とかは年1回です。病状によっては2週毎、1ヶ月
毎の受診もありますが特殊治療とか、病状の悪い人に限られています。その代わり自
己血糖測定が保険の中に入っているので患者さんにはこれを盛んにやってもらいます。

  治療はHbA1cよりも血糖値を良く調べて対応するのが良いと考えている様です。勿論測定器も血糖試験紙も保険でまかなわれます。患者さんは療養管理のやり方を指導されたら、自分の身体は自分で管理し自分で守りなさいというのが一般的な考え方のようです。従って、HbA1cの簡易測定器も市販されており、自己負担により容易に調べることができます。

 アメリカでも医療費節約のため、電話再診(有料)を積極的におこなったり、入院日数を減らしたりして厳しい面が沢山ありますがそれなりで全体的に調和がとれてきているように思われました。訪米目的にはもう一つ大きなテーマをもっていきましたが、これについては後日お知らせ致します。