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日系アメリカ人の糖尿病

2003.12.20


  先月の話の続きとして、サンフランシスコ糖尿病センターを訪問したもう1つの目的について述べます。日本の糖尿病患者さんは毎年10万人づつ増加し、740万人(平成14年度調査)有病率16%となっています。この第一の理由は生活様式が全体的に西洋化していること、特に食習慣が変わったことに因ります。いまの日本は米消費量が減り、油脂類、肉類の消費が増大しています。ちなみに学童の毎日の給食メニューをみてもカタカナメニューが半分以上です。恐らく学童の好みに合わせたメニューで作られた結果だと思います。
 

  日本人はもともと糖尿病になりやすい民族であることはご存知ですか?日本人の先祖は南方系と北方系の由来説がありますが、北方系民族はユウラシア大陸からモンゴルを下り日本に渡ってきた民族で寒さと飢餓に耐えうる民族としての体質が作られてきました。いまのような豊かな生活で過ごしていると膵臓B細胞のインスリン分泌が低下し、身体を動かさないためにインスリン抵抗性も大きくなってきているのが今の日本人です。
 

  私達よりも早くに西洋化になじんだ人達はアメリカへ海外移住した日本人達です。ハワイ、シアトル、サンフランシスコには多くの日系アメリカ人が長いこと生活しています。日系3、4世はほとんど日本語の会話ができない年代になってきています。日本人がまるきりアメリカ式食生活をしていると、糖尿病の発病率が高くなることをシアトルのフジモト先生(日系アメリカ人2世)が1987年に報告しました。糖尿病有病率は日系アメリカ人20%、アメリカ白人18%、日本人16%です。糖尿病合併症の発病頻度も日本人に比べ日系アメリカ人は約2倍高いことが報告されています(東大 萩原健英先生)。これらの事実は、糖尿病になり易い日本人が欧米風の食事をしていると糖尿病有病率が高くなり、合併症もきたし易いということです。
 

   そこで私達は日頃の診療で患者さんには和食(主食と一汁三菜)を勧めていますが、日系アメリカ人糖尿病患者さんにも和食を食べてもらい良好な血糖コントロールを保つことを提案しました。日系アメリカ人は日本食の味覚を忘れているかもしれませんが、日本人の血が流れているならば慣れると考えています。味覚にも民族的な特徴があるといわれています。サンフランシスコの日本人老人ホームを訪問しましたが、みなさん結構和食メニューを楽しみにしていました。日系アメリカ人糖尿病患者さんに和食をとってもらうための食事つくりをどのように教えるかが、いま検討課題になっています。