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デンマークのステノ糖尿病センタ−を訪問して

2004.8.9


 6月28日より1週間、デンマークの病院を数カ所訪問する機会をもちました。デンマークは総人口530万、首都コペンハーゲンの人口150万人、大小500の島々からなる世界最古の王国です。昔はノルウエーやスエーデンもデンマーク王国に入っていた大国です。今年5月14日は第一王子とオーストラリアの女性との結婚式があり、街全体が明るく、活気の満ちた雰囲気でした。

 コペンハーゲン郊外にある閑静なステノ糖尿病センターは世界的に有名な糖尿病専門病院です。総ベット数12床と入院は小規模ですが、患者数5400名で糖尿病専門医8名、研修医7名、看護師25名、栄養士2名、検査技師20名、足治療士2名で診療をおこなっています。一日外来患者数100〜150名です。糖尿病患者さんの受診は基本的に三ヶ月毎になっています。糖尿病診療のやり方はアメリカとほぼ同じです。大きく異なる点はデンマークの医療費は基本的に総べて無料です。アメリカは民間保険会社からの支払いとなり、外来診療のみの保険、入院も含める保険、治療法別のなど加入する保険の種類が異なります。デンマークは医療費無料を初めとする社会福祉国家であるため税金が高く、収入の6割を税金として納めねばなりません。

 糖尿病患者の大半は1型糖尿病で、2型糖尿病は一般内科医で治療を受け病状変化した時にステノ糖尿病センターへ廻されます。このやり方の裏には患者さんの医師を選ぶ余裕のないことを意味しています。外来は1型糖尿病外来と2型糖尿病外来に別れています。最近日本でも資格認定化された糖尿病療養指導士(CDE)が活躍していますが、デンマークのCDEレベルは高く診療の権限と責任は大きいです。例えばインスリン注射量の変更などはCDEに任されています。一般に糖尿病患者管理は看護師、栄養士、薬剤師に任されており、診療や検査上の大きな決定、重病になった時、特殊な糖尿病の診療が医師の出番のようです。いま、デンマークの医療で問題になっているのは日本と同様に医療費です。患者さんの受診は3ヶ月毎、検査、治療も極力控えられています。診療や教育指導の大半はCDEが患者宅を訪問することにより医療費を節減しています。

 しかし一方では中近東からの移民が増えて、受診外来はトルコ人外来、パキスタン外来など特殊外来ができています。移民者の糖尿病は特に子供の2型糖尿病が増えています。彼等は栄養知識はなく、健康意識もありません。貧乏生活を抜け出し西洋風生活に馴染みコーラとハンバーグに明け暮れています。デンマークはEU連合に加盟しているため他国と同様に移民を断ることが出来ません。国民医療費の14%が移民患者に当てられています。また、これ迄に多かったエイズ、ビールス性肝炎は麻薬常用者の注射器の使いまわしで感染しており、国ではその病気の拡大を防ぐため注射器を彼等に無料提供しています。この政策によりエイズ、肝炎患者数は徐々に減っているそうです。国によってはそれなりの難しい医療問題があり、日本の医療制度の優れていることをつくずく考えさせられました。