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砂糖賛歌

2005.1.5

 砂糖は身体に大切なものとしてその効能を述べますが、糖尿病患者さんは一日4g(0.2単位)を調味料で用いることと日本糖尿病学会では決めています。

 日本人の一日平均砂糖摂取量は約50g(年間19.2kg2003年)で、世界のランキングで86位になります。最も多く摂取する国はキューバ169g、ロシア126g、イギリス114g、アメリカ85g、少ない国としては中国20gです。日本の砂糖消費量は年々少なくなり、糖尿病罹病率と逆比例します。つまり砂糖取り過ぎが糖尿病を引き起こす説は成立しません。従って砂糖は糖尿病の悪役ではありません。アメリカの糖尿病学会では砂糖とデンプンは血糖への影響はほぼ等しいので砂糖摂取量の制限はなく一日の糖質摂取量の中でとるようにし、炭水化物として15gを1単位としています。インスリン治療患者さんには炭水化物摂取量に合せてインスリン量を決めています。

 興味ある話では、糖尿病患者さんの一日の食事に砂糖45gをまぜてとらせても血糖値、中性脂肪には変化がなかったと報告されています。また、砂糖、果糖、でんぷんでそれぞれ作った間食でも血糖値はいづれも同じだったといわれています。砂糖摂取の多い患者さんに合併症が多いと言う話も、砂糖の取り過ぎで虫歯が多いと言う話もないようです。

 血糖値は食べ物のブドウ糖濃度で決まりますが、これを食品の血糖上昇指数(グライセミック.インデックス=GI)といいます。アメリカの食事療法では良く用いられています。ブドウ糖摂取では最も早く、最も高い血糖値を示します。これを指数100とすると、蜂蜜80、白米70、砂糖やスパゲッテイ50、アイスクリーム30となります、したがって砂糖はブドウ糖のGIの半分になります。

 むしろ砂糖をとる生活は人間性を豊かにし、健康のためには良いと最近はいわれています。人間は生まれた時から甘味を好み、安らぎを感じます。赤ん坊はミルクよりも母乳をとっている時の方が表情が安らぎ、心地よく眠るそうです。それは母乳がミルクよりも甘味が深いからでしょう。アメリカの学童で朝食に炭水化物をとってくるものの方が、そうで無いものと比べ試験点数が良いといわれています。また、20才の女性186名に物語をきかせておいて記憶テストをすると血糖値を高くしていた者ほど記憶が良いとされています。

 人間の脳はブドウ糖の一日消費量が最も高く120g、赤血球50gです。脳にとってブドウ糖は最も必要なエネルギー源でブドウ糖が少ないと情緒不安定となり、いま若者の社会問題となっている「きれる」「自殺」「殺傷」の原因ともなります。

 砂糖の効用をいろいろ述べましたが糖尿病患者さんの一日砂糖摂取量4.0g以上にするわけにはいきません。必要量の炭水化物を充分に取っていると、それはみなブドウ糖に変わり体内に吸収されます。また蛋白質のアミノ酸からも体内でブドウ糖が合成されますから、ブドウ糖不足になることはありません。

 甘い物もアルコールも一種の習慣、なれであり、それを続けていると徐々にとる量が増えていきます。できるだけ甘い物から遠ざかるようにしましょう。ブドウ糖の必要性が分かりましたらご飯をはじめ表1を充分に取りましょう。