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第48回日本糖尿病学会からの話題

2004.6.10


  平成17年5月12、13、14日にわたり神戸大学内科学教授春日雅人先生が学会長をつとめ、神戸ポートピアホールで日本糖尿病学会が盛大に行われました。今年の学会のメインテーマは「生命科学が切り拓く糖尿病の新たなステージ」と格調高いものです。春日教授は真の学者肌の方でインスリンの細胞内の作用機序について長年研究されてきています。いうまでもなくこの分野では国際的に有名な方です。春日教授が国際的視野で糖尿病を眺めたことと伺えることはシンポジウムテーマが国際化していることです。

  世界的に話題となっている「メタボリックシンドロム(糖尿病、高血圧、高脂血症、肥満、インスリン抵抗性の併発)」、「アジア人型の糖尿病は存在するか」とか「諸外国における糖尿病療養指導士の役割拡大と変遷」、「インスリン抵抗性の分子生物学」などが取り上げられ外国人講師および発表者が44名も登場しました。
現代の生活習慣はメタボリックシンドロームを起こしやすく、この病態一つづつが動脈硬化を引き起こし、2つ以上もつことによりさらに動脈硬化が促進され脳心血管障害を引き起こします。メタボリックシンドロームはさらに現代病であり生活習慣病といわれ、今年の内科学会で診断基準が確立され新しい病名となりました。この病気は直ちに死につながるものではありませんが、生活の質QOLが著しく低下します。現実的には今の生活を継続していけない身体になるということです。


  患者さんが最も知りたいテーマといえば再生医療でしょう。再生医療とは「機能不全に陥った組織や細胞を人為的に補うことにより機能を回復させる医療」と云われています(神戸大清野進先生)。そのための方法としては臓器移植、細胞移植、人工臓器、体内にある組織や細胞の機能を再生させることです。具体的な手段としては1膵臓移植、2膵島(ランゲルハンス島)移植 3人工膵臓(バイオ人工膵)4幹細胞からB細胞(ベータ細胞)を試験管内で作製移植する、などがります。


  再生医療の最先端の研究は大阪大、京都大、神戸大、埼玉医大、熊本大、順天堂大、慶応大、滋賀医大などで行われています。その材料となるものは小腸分化細胞、膵前駆細胞、膵外分泌細胞、神経幹細胞、ブタ膵分化誘導、骨髄幹細胞などが各研究施設で使われています。なにを用いて膵島細胞を分化誘導するかがこの研究の最大課題となっています。
しかし残念ながら再生膵(島)細胞が確実に血糖値を下げる成績発表までには至っていません。この研究の続きは来年5月の東京における学会で発表されるでしょう。