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ヘモグロビンA1cを良くするための血糖値とは (その2)

  2006.10.11  

前回に引き続き同じテーマの「その2」を解説します。

  合併症の発病と進行または改善していく時の糖尿病の病状はそれ迄の血糖値、とりわけヘモグロビンA1c(略してA1cとして述べます)の経過で説明されてきました。つまりA1cの良い悪いで合併症の防止、進行が決まるとされています。これについては国内、海外の多数の調査、研究(大規模介入試験)が証明しています。ではA1cを良くするためにはいかに血糖値を下げていくのが効果的かという疑問がおこります。「血糖値とヘモグロビンA1cの関連について」今回ここで患者さん向けに解説するのは国内では初めてと思います。今回の研究成績は当病院の成績であって、国内、海外で広く一般に言われていることでないことをお断りしておきます。

  今回の研究テーマは「血糖悪化または改善する時のヘモグロビンA1cに係わる朝食前及び各食後血糖値の寄与」です。

  インスリン治療している80名の糖尿病患者さんに毎月2週毎に朝食前と各食後90分で自己血糖測定(略して自己測定として述べます)を4ヶ月間行ってもらいました。その中で61名の方はA1cが改善されていき(改善群)、17名が徐々に悪化していきました(悪化群)。そこで改善群群と悪化群の毎月1回測定のA1cに対して、それ迄2ヶ月間の朝食前と各食後の平均血糖値(一日4回自己測定)がいかに係わっているかを調べました。朝食前、朝食後、昼食後、夕食後それぞれの血糖値とヘモグロビンA1cの関係の大きい、小さいは統計解析の相関係数(r)の大きい、小さいで表しています。

 【図1】では改善群と悪化群の4ヶ月間のA1cの経過と、この間2週の自己測定血糖値結果を示しています。改善群のA1c8.1%から4ヶ月後6.9%となり、悪化群では7.1%が8.3%となりました。このA1cの変化に対して血糖値をみると両群とも血糖値の改善または悪化を示す特色ある曲線はここでは見られません。つまりA1cの変化に大きく係わりをもった食前、食後の血糖曲線は見られません。

  そこで【表1】で示すように8週、12週、16週のA1cに対して、それ迄8週間(2ヶ月間)の血糖値がいかに係わっているかを相関係数で調べました。この手法は科学研究では広く用いられているやり方です。改善群では朝食前血糖値の相関係数が大きく、次が朝食後となっています。悪化群では朝食前が最も大きく、しかも8週に比べ12週、16週と相関係数が徐々に大きくなります。次に昼食後で大きくなります。以上の成績をまとめるとA1cが改善されていく時は朝食前と朝食後血糖値が大きく係わることを示します。さらに両群ともA1cの変化には朝食前血糖が大きな係わりをもつことが推測されます。

  次に改善群と悪化群の同じ血糖値に相当するA1cを調べました。【図2】は朝食前血糖値別でA1cをみると同じ血糖値でも悪化群のA1cは改善群と比べ明らかに高くなります。両群で血糖値が同じでも悪化群の血糖値はA1cに大きく係わることを示します。

  同様に【図3】で食後血糖値別でA1cをみると同じ血糖値でも悪化群では改善群よりA1cは高くなります。朝、昼、夕食後血糖値別でA1cをみると、改善群で3食後血糖値の間でA1cの係わりに差のないことが示されました。しかし悪化群では血糖値159以下と280以上で昼食後血糖値でA1cが高くなり、220から259で夕食後血糖値のA1cが高くなります。これらの成績からいえることは同じ食後血糖値でもA1cが悪化していく時は朝、昼、夕食後血糖のA1cに対する係わりの異なることが推定されます。

  次に【図4】A1c高低値別で血糖値を調べます。改善群ではA1c6.5%未満にするには朝食前血糖105以下、朝食後血糖170mg/dl以下にする必要があります。A1c7.0%未満にするには朝食前は105朝食後血糖194mg/dl以下となります。悪化群ではA1c7.0%以上になる時は朝食前126以上、昼食後血糖値215mg/dl以上になるとA1cは悪化していくことが考えられます。

  以上の成績は数値を示した細かな解説となりましたが、当病院で長年にわたり患者さんにお話していること、朝食前血糖値120mg/dl以下、朝食後1時間半200mg/dl以下にして下さいという根拠を統計学的に証明しました

 

図1】

 

 

【表1】

【図2

【図3

【図4

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