<戻る

自分は1型糖尿病か、2型糖尿病か?

  2006.11.11

  糖尿病と診断されたら2型糖尿病と考えても間違いありません。 新聞、テレビ、雑誌に載っているような糖尿病は2型糖尿病のことをいっています。 今回は1型糖尿病の話なので自分には関係ないと思うでしょうが、実は2型から1型に移っていく場合のあることを説明します。1型糖尿病の患者さんは全糖尿病患者さんの1割くらいで、極めて少なく子供、若者に発病するのが大半です。

2型糖尿病は糖尿病遺伝子で発病しますが、1型糖尿病はウイルス感染により数日で発病する劇症1型と自己免疫でおこるものがあります。多くの1型は自己免疫で起こりますが、その他の自己免疫病は肝炎、アレルギー、甲状腺疾患など多くの病気があります。糖尿病では膵臓のB細胞を破壊していく抗体(自己抗体)が体内でつくられて発病していきます。この抗体はB細胞と結合して徐々に細胞を壊していきますが数週、数カ月、数年かけて破壊されインスリンの産生が低下していき血糖値が高くなっていきます。のどが渇き、疲れ易く、痩せていきしまいには意識がもうろうとしてきます。これらの症状が徐々に起こる場合では子供であると日射病とか、脱水症とか、脳炎を疑いますが、血糖値を調べると一目瞭然です。子供がぐったりしているとこんな簡単な検査が見逃されることがよくあります。血糖値は400から1000mg/dlになることがよくあります。尿にケトン体が出ていると血液が酸性になるケトアシドーシスといって極めて危険な状態といえます。外来通院している患者さんにも時々尿ケトン体を認めることがありますが、体内の糖および脂質代謝が極めて悪い状態にあるといえます。1型は診断がついた時から直ちにインスリン注射を始めなければなりません。その診断は臨床症状が明らかなものであれば簡単ですが、徐々に進んできたものであれば2型と診断されるかも知れません。

  次に2型と思って治療されてきた人が徐々に1型に移っていく「緩徐進行1型糖尿病SPIDDM」についてお話します。 この1型糖尿病は発病当初は食事と運動療法で管理される病状ですが、内服剤となり次第に薬用量が多くなり多剤併用療法でも血糖値が下がらずインスリン療法となる病型です。全く2型糖尿病の経過に似ていますが、徐々にB細胞の働きが低下していきます。この場合の1型の診断は原因が自己免疫抗体で起こるものですから、抗体の検査(GAD抗体、IA-2抗体、IAA)で診断されます。今は食事療法のみ又は内服剤で治療中であってもこれらの抗体検査が陽性であれば将来インスリン治療となる可能性が大きいと考えられています。しかし2型糖尿病患者さん総てに自己免疫抗体の検査を発病時に、または治療経過中に検査をして早くに見つけておきたいと思うでしょうが、今の医療保険ではそれができないことになっています。一般に日常診療では内服剤を増量したり併用療法をしても血糖コントロールが悪くなってきた2型糖尿病患者にインスリン治療を始める時に抗体検査をするのが一般的なやり方です。子供の1型糖尿病の防止ができないのと同様に、2型糖尿病のように発病しても1型に移行していくのを防ぐ方法はありません。この経過をとっていく患者さんはできるだけ早くインスリン治療を始めることが必要です。インスリン導入を遅らせていくと徐々にB細胞が破壊されていきインスリン治療がむつかしくなります。

1月31日と2月1日付けの朝日新聞に1型糖尿病患者さんの体験記が掲載されていたのでご一読ください。