第67回米国糖尿病学会からの最新情報
2007.8.18 3年毎に開催される国際糖尿病学会がありますが、米国糖尿病学会は毎年世界中の研究者の発表の場となっており、アメリカにいて世界中の研究の最新情報を知ることができます。また米国糖尿病学会の研究発表レベルは国際学会より数段高いと言われています。 今年の米国糖尿病学会は6月22日から26日までの5日間、アメリカ5大湖のひとつであるミシガン湖に面して開けた巨大都市シカゴで開催されました。人口290万のアメリカ第3番目の都市であるシカゴは巨大なビルの立ち並ぶ重厚な美しい都市です。何ごとも世界一が好まれ、その世界一のひとつである世界で最も広いマックコーミック プレース コンベンション センターで学会が開かれました。 あまりに会場が広すぎて総ての会場を見回り切れなっかったのが実情です。多くの発表の中で誰にも関心のある研究話題をいくつかご紹介します。 1 持続血糖測定器(CGM) 一般に診療で用いられている自己血糖測定器は一日6回から8回の間歇的な測定で血糖値を知り、一日の血糖値の流れを推測して治療法を決めています。しかし測定されていない時間帯の血糖値(特に睡眠時間)が意外と高く、低く変化していることがあり、3日間連続して測定できる機器です。この測定器は皮下に測定用のセンサー針を刺したままで皮下組織中の糖濃度を調べ、血糖値に換算されて表示されます。それに要する時間が2、3分かかり血糖値の時間ずれが生じます。この持続血糖測定器と持続インスリン注入ポンプを合体して、連続する血糖値を測りながらインスリン注入ができる持続インスリン注入ポンプが展示されていました。これらの試作は糖尿病治療の基本が膵臓の働きに近付こうとしていることを示しています。 2 経鼻または経肺吸入インスリン 注射針を用いないインスリン投与法ですから患者さん側からみれば理想的治療法といえます。しかしアメリカでは既に発売されていますが次の理由で一般化していないようです。 喫煙者、慢性呼吸器疾患をもつ人には適応されません。吸入インスリンは食後血糖値をさげることが主とする目的ですから、中間型または持続型インスリンを必要とします。機器が大きく、一日3回吸入しなければなりません。また価格が注射インスリンの数倍量を用いるため高価となります。アメリカも医療経済が厳しくなっており、費用のかかる治療は敬遠されます。 3 GLP-1とDPP-4阻害剤 当院でもこの2剤の治験は多くの方に試みてもらい、その効果の良いことは充分に分っていましたが、世界各国の多くの報告からもその効果は充分に示されていました。この2剤はこれ迄の糖尿病薬とは作用が全く異なり画期的な薬剤です。これからの糖尿病治療法は大きく変わると思いますから、患者さんも大いに期待して良いと思います。薬剤の説明については当病院のホームページの昨年8月に掲示した「画期的糖尿病新薬の開発」をご覧下さい。 発表演題数2000以上に及び、その他膵島移植、肥満に関する研究はアメリカ研究者の最も力を入れているところです。特に肥満についてはアメリカ国民の30%が肥満といわれ、20代肥満者が膝、股関節障害を持ち杖をついて歩いている光景はそう珍しくなく、50、60代肥満者となると電動歩行椅子で街を行き来しているのが実情です。 |