<戻る

持効型インスリンという新製剤とは

 2008.3.11 

 健康な人の膵臓は、基礎インスリンといって、1時間当たり1単位弱のインスリンが24時間持続的に分泌され、食事を摂るたびに1回の食事あたり約1020単位ものインスリンが追加インスリンとして膵臓から分泌されています。

1型糖尿病の人は、膵臓が何らかの原因で壊れてしまうため基礎インスリンも追加インスリンも分泌されません。従って、基礎インスリンを補うために中間型や、混合型インスリンを使います。また食事する時の追加インスリンを補うために、速攻型や超速効型インスリンを食事ごとに注射します。

2型糖尿病の人は病期の初期段階では、主に食後の追加インスリンが少なく、食後血糖が高くなります。更に病期が進むと基礎インスリンの分泌までもが低下するために朝食前の血糖が高くなってきます。

昨年末、新たに基礎インスリンを補うべく持効型インスリン製剤が発売になりました。

ひとつはランタス(サノフィ・アベンテイス社)、4年前から発売されていましたがペン型注射器の不具合で新規の患者さんの処方が出来ない状態でした。しかし、新しい注射器の供給が開始され、新規処方が可能となりました。

もうひとつはレベミル(ノボ・ノルデイスク社)です。

持効型インスリンの特徴をお話します。

<持続時間>

血中インスリンがなだらかに上昇し平坦となり、約24時間持続します。多くの人は11回就寝時の注射で基礎インスリンは補えるようですが、12回したほうが良い人もいます。

<低血糖・体重増加>

従来の中間型インスリンと比較し、低血糖の頻度が少ないと報告されています。

低血糖が少ないと補食する回数が減るので、体重増加もきたしにくいようです。

<適応>

1型糖尿病患者さんの基礎インスリンの補充として大変有用です。

寝る前に注射する従来の中間型インスリンでは、どうしてもインスリンの作用が弱くなる午後から夕食前の血糖が上昇しやすくなっていました。しかし、持効型インスリン製剤では持続時間が長いので十分カバーすることが可能となりました。

また、2型糖尿病の患者さんで、経口薬のみでは十分な血糖コントロールが得られない人は経口糖尿病薬を使用しながら基礎インスリンを注射するこの方法が最近BOT(Basal supported Oral Therapy)と呼ばれ、血管障害の発症・進展を阻止するためのインスリン導入の有用な1つの方法として注目されています。

経口糖尿病薬を漫然と飲み続け、種々の合併症が出てからインスリンを使用するのでは何の意味もありません。各インスリン製剤の特徴を良く理解し、きめ細かく使いこなすことによって、重篤な血管障害を減少させることが出来るので安心して生活することができます。

中間型インスリン ペンフィルN、ノボリンNなど。
混合型インスリン ペンフィル30R、ヒューマカート3/7、ノボラピット30Mix、ヒューマログ25Mixなど。
超速効型インスリン ノボラピット、ヒューマログなど。