糖尿病患者の食行動変化
2008.4.10 去る2月2日札幌市の病院学会が札幌市医師会館で行われました。その時に当病院の小林幸織看護師が「教育入院後の糖尿病患者の食行動の変化」について発表したので、その概要をお話します。なおこの研究は当院患者さん52名のご協力があって遂行されたもので、有意義な研究結果をもつことができ、この場で厚くお礼を申し上げます。 研究目的は入院時の教育指導後、 通院している肥満と非肥満の糖尿病患者さんの食行動の変化を調べることです。入院時の肥満群(28名)と非肥満群(24名)の教育指導前のヘモグロビンAIc平均値はそれぞれ9.4%と8.7%でした。退院4ヶ月後のA1cは6.6%と6.5%となりました(図1)。この数値に至った退院後の食行動の変化を1)食べ方(例、よく噛まない、早食い、食後の間食)、2)食習慣(例、夜食をとる、遅い夕食、短い食事時間)3)食事の時の心理面(例、大食して後悔、甘いものは太るというジレンマ、やせる食べ方が分からない)の3項目について質問55問に解答してもらいました。答えは「そういうことはしない(1点)」、「時々する(2点)」、「する傾向がある(3点)」、「全くそのとおりする(4点)」で判断してもらい、総合点数で判定しました。従って点数の高いのは悪い食行動といえます。この方法で結果をみると、肥満群では4ヶ月まで徐々に食行動が改善されていきます。非肥満群では2ヶ月後までは徐々に改善されますが、4ヶ月後ではまた悪い食習慣に少しづつ戻っていくことが分かりました(表1)。この現象はかって国際糖尿病学会で教育入院の効果について当院が発表した時のデータと同じでした。 次に解答された総合点数の中身についてお話します。 悪い食行動にならない割合が非肥満群では50%以上であるのに対して肥満群では40%と低いです。悪い食行動を改善できない割合は肥満群で多くかつ月日が経っても矢張り改善されないままでいることが分りました(図2)。 そこで総合点数の中身を食行動の項目別に時間経過で調べました。 肥満群では食べ方と食事の時の心理の改善が悪く、食習慣の改善は見られますが4ヶ月後では再び悪くなります。 他方非肥満群では3項目とも徐々に改善されますが、4ヶ月後ではやはり少し元にもどっていくのがうかがえます(図3)。 そこで肥満群の食習慣の再悪化の原因をさらに調べました。 2ヶ月より4か月後で悪くなる食習慣は「夕食は豪華で量が多くなる」、「付き合い食事が多くなる」、「ゆっくりした食事時間がとれない」、「夜型人間になる」、「不規則な食事時間になる」ことでした(図4)。 食習慣は数年、10数年と培ってきた食事の取り方ですからそう簡単に変えられるものではないでしょう。社会生活の環境や周りの人、家族構成が変わらない限り難しいことです。しかしその人の身辺に大きな問題が起ったときには一瞬にして立ち直るものです。 その時はその人の生活に幸か不幸かが舞い降りた時です。例えば結婚、転地、転職、死別、大事故、大病なのでしょう。 それよりも確実に立て直せる事は、強い意志を持っていまの食習慣を変えることに挑戦することです。
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