速報 2型糖尿病の血糖管理強化療法は良いか、悪いか 2008.5.20 アメリカのNIH心臓肺血液研究所(日本の厚生労働省に相当)は何らかの心臓病をもつか、その危険因子を2つ以上もつ2型糖尿病患者に血糖値管理の強化療法(内服剤及びインスリンを用いて)を行った場合の改善率、死亡率を調査しました。この調査の中間報告が今年2月に発表されましたが、いま世界に重大な問題を提起しています。 アメリカとカナダの77医療機関で一斉におこなわれた心血管リスクを検討する大規模臨床試験ACCORD研究といわれます。 何らかの心血管障害をもつ患者1万251名を2群に分け強化血糖管理群(5128名)と通常血糖管理群(5123名)を2から7年間経過をみました。治療目標値は強化血糖管理群でヘモグロビンA1c(HbA1c)6.0%以下、通常治療群で7.0%以下としました。しかし治療中の実際のHbA1cはそれぞれ6.4と7.4%となりました。試験開始4年後の死亡者数をみると通常治療群203名に対し強化治療群257名で、その差54名であることが分かりました。年間各群1000人当りの死亡率は9.9人と12.5人となります。 研究当初の予想は心血管障害をもつ患者に厳格な血糖管理をすると病状は改善され、死亡率も低くなると考えました。その裏付けとして糖尿病2次予防の合併症をもたない1型糖尿病患者に対する厳格な血糖管理と生活介入試験をおこなうと、いずれの合併症もより予防されるという有名な研究報告があるからです(DCCT)。しかし一旦合併症をもった患者に厳格な血糖管理(HbA1c)することは好ましくないという報告も数多くみられます。それらの報告は一般に細小血管障害をもつ患者についてのもので、眼、神経障害については定説となっています。今回の大血管障害について、2型糖尿病においても同じことが報告されました。結局この研究は厳しい結果が出て中止となりました。まだアメリカNIHからの研究方法、成績の詳細な報告が出されていないためか日本糖尿病学会からは正式なコメントは出ていません。 一般に合併症の発病または進行因子として次のことが考えられています。 @HbA1c7.5%以上の持続 A急速な血糖値改善 B頻回の低血糖 C日内血糖値の変動幅(MAGE)増大 D突然の身体障害 E妊娠時と出産時 これらについてはもう少し説明が要るかもしれません。 |