第51回日本糖尿病学会からの最新情報
2008.6.18 今年の日本糖尿病学会は5月22、23、24日(土)にわたって東京国際フォーラムで開催されました。主宰された学会会長は東大教授門脇孝先生で日本国内の糖尿病専門医、研究者に加え、50名以上の海外の糖尿病研究者が講演にきました。 今年の学会のメインテーマは「ともに歩む、糖尿病学の新しい半世紀—希望と挑戦」とされ、糖尿病の治療と根治を徹底することに期待を込めています。 本学会の総演題数は1767題でこれ迄の50年間で最も数が多かったということです。内容も次のシンポジウムのテーマのとおり多岐にわたり、21世紀の糖尿病研究がいかに治療の展開をもたらすか、その方向を示しているように思えます。
限られた時間で、見聞した話題を断片的にお話します。 薬物治療の話では、インスリン注射とインスリン抵抗性改善剤の併用療法は健康保険では認められていませんがこの治療法はヘモグロビンA1c改善に効果的と報告されています。保険適用になることが望まれます。また糖尿病予備軍にメトホルミンを投与しておくと糖尿病発症がかなり抑制されることが発表されました。インスリン注射は治療経過中いつ開始されるかの問題について面白い話がありました。一般にはヘモグロビンA1c7.5から8.0%経過するとインスリン注射をする事を患者さんにお話しします。糖尿病専門医多数に対しもし自分が糖尿病であったらヘモグロビンA1c何%になった時にインスリン注射を開始しするかを質問しました。専門医はA1c7.7%と解答しています。日本における実際のインスリン注射開始時の平均ヘモグロビンA1cは9.2%で、世界で最も高い数値といわれています。つまり海外では日本よりもっと早い時期からインスリン注射を開始しています。 次に自己血糖値測定値についてスイスの糖尿病専門医アヘルマン先生の話は日本でも同じ事がいえます。患者さんのライフスタイルが分らないから、治療の判断が定まらない。自分の子供がどう過ごしているのか分らないように患者さんのライフスタイルが見えてこないと言っています。更に自己血糖測定でみた日内血糖値の変動のばらつきがあり、ヘモグロビンA1c7.0%の時と、8.0%の時のばらつきが異なる。さらに三日間連続して日内血糖測定値をみると数値が異なると指摘しています。その真意はおそらく一日だけの日内血糖変動をみて直ちにインスリン注射量を変える事に警告しているのかもしれなせん。 最後に特定健康診査(特定健診)が目指すメタボリック症候群(メタボ)の予防と改善についての話です。いわゆる肥満対策(BMI>30)として内服剤の開発、遺伝子治療、外科治療があります。アイデアとして面白いと思ったことは大分大学、東京大学の外科治療の話です。内視鏡を用い胃袋内に水400cc位のゴム球(ヨーヨのようなもの)を留置することや、胃袋の周囲にバンドを2、3本かけ胃が拡がらないようにする方法です。あくまでも胃内容積を小さくするためのもので普通量食べても満腹感をおこします。これらの方法は最終手段とするもので、基本的には行動療法を継続して行うことです。
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