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  北海道の糖尿病診療実情 

2009.4.14

 糖尿病は日本の国民病といわれ、これまでに数々の健康政策、検診方法が打ち出されました。発病を早くから防ぐということで厚生労働省、日本医師会、日本糖尿病学会がそれぞれの立場から調査や、生活習慣介入試験を行ってきています。2007年の日本国民健康栄養調査の報告をみると「糖尿病と考えられる人」は890万人で、「糖尿病の疑いのある人」と併せて2210万人となっています。

 北海道の実情について、旭川日赤病院の森川秋月先生の報告がありますのでそれを中心にしてお話します。北海道の人口564万人中、「糖尿病が強く疑われる人」197千人、「可能性が否定できない人」431千人います。人口10万人当たり177人の有病率となります。日本で最も有病率の高い県は徳島県262人、最も少ない県は沖縄県で88人となっており北海道は中間位でしょうか。2008年の北海道糖尿病診療実態調査は糖尿病専門医146名、非専門医3381名にアンケート調査をしています。非専門医師が糖尿病専門医師に診療のことで尋ねたいと思うが身近にいないという人が66.8%もいました。全道の糖尿病専門医146名の75.4%は札幌、旭川に在住しています。診療している全糖尿病患者数は圧倒的に非専門医師の方が多くなっています。

 一方、糖尿病の診療では患者の療養生活の指導、教育、インスリン注射や自己血糖測定の指導をしなければなりません。資格認定されている日本糖尿病療養指導士(CDE)が主としてこれらに当たります。当院でも15名のCDEが活躍しています。北海道のCDEは約1300名、札幌に700名がおり、順次定期的に教育指導技術の向上のためセミナーでトレーニングを受けています。しかしこのように手を尽くしても日本の糖尿病患者数は年々増大し続けているのが実情で、現在890万人の患者(驚くことにこれらの人の半数が未治療)がいます。2010年には1080万人になると予想されています。

 これから画期的な治療法が開発されることなく、合併症防止も確立されなければ膨大な医療費がかかることになります。たとえば腎臓障害が進行すると血液透析を受けねばなりません。2007年調査で道内の透析患者数は1450人で、一人当りの年間透析費用が500万から600万円かかるといわれています。また46才で糖尿病が発病し80才で死亡した場合を想定しコンピュウター分析すると853万円、中断して再治療すると963万円におぼるといわれています。

 糖尿病治療の基本は自分自身の健康管理(食生活、身体活動)、家庭生活の管理、職場業務の管理を上手に行うことです。そのために100点満点をとる必要はありません。すべてのことをほどほどにしておくこと(八分目人生)で糖尿病は良くなるものです。