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新年明けましておめでとうございます

2010.1.14

毎年の年始めのお話は「一年の計は元旦にあり」的な訓辞で始めることが恒例になっていました。今回は近着の医学雑誌に面白い話がありましたので酒宴の席での話題のひとつにして頂きたいと思います。

■お酒のはじまり

「お酒はいつ、どこで、だれが作ったものか」という話で始めます。この記事で述べている「お酒」とは日本酒を指しているわけではなく、アルコール含有物、含有水をさしています。

答えは人間誕生の前に自然にできあがっていたという説です。猿ではなく極めて自然現象として酒が出来上がっていました。人間が地球に現れる前の自然界の果物、木の実が熟した時にアルコール発酵を引き起こす微生物が付着して、アルコールを含む物質が出来上がったとする説です。これを裏付ける説明がいくつか考えられています。恐竜がこのアルコール含有物を食べて、酔った形跡はありませんが、アフリカ自然動物公園の動物保護官の手記として記載があります。

「この公園内には熟すると甘みのある果実をつける樹木が多くあり、地面に落下した果実は数日後にアルコールの匂いを発散させ、その匂いを嗅ぎつけてきた象、キリンたちが競ってこれを食べる。大抵の動物は酔ってふらふらし面白い行動をとる」

この手記から見るとなんらの作為的行為もなく自然界で落下した果実に野生の果皮に生息する微生物、酵母がついてアルコール発酵してアルコールができることになります。糖分の多い果物ではアルコール度数7.5%(ビールは4.5%)になりますから酔いが早いです。この高アルコール含有の果実を象、キリン、ヒヒ、猿が好んで食べ酔っ払うのです。だから翌日は二日酔いで元気がなく、盛んに水を飲むそうです。

地球上に人類が誕生し自然界の植物、動物を食べて生活していた時代がありました。まだ人為的に食べ物を作らなかった時代です。日本の遺跡から出土する土器のように食物を入れる器が大昔も必要でした。それは原始的な器で樹木の葉、樹皮、貝殻、木の幹、動物の骨で、それに果物、特に野生のブドウを入れておくと器についていた野生酵母の働きで酒ができました。これが人類の非人為的にできた最初の酒になります。

人間が農作業をおぼえて農耕期時代に入ると収穫の神事に酒を供える風習ができました。酒は収穫の感謝のためもありますが、人間と神の仲をとりもつものでもありました。日本では今から4000年前(紀元前2000年)頃の縄文中期の遺跡から酒つぼが発掘されています。

日本では古来から酒は一人で飲むものではなく、冠婚葬祭のときの酒宴で飲む風習となっていました。また「酒宴の場」と「食事の場」が異なり、食事の場で食事を済ませて酒宴の場へ席を移していました。丁度茶会のように盃杯をまわし飲みする式三献から始まるようで、結婚式でみられる三々九度がその名残なのでしょう。

もともと日本人には一人で酒を飲む、独酌という風習はありません。飲酒は儀式の酒宴が主となっており、愛情、友情を表すときに飲酒するのが基本でした。酒盃を巡らせてお互いが仇同士でないことを誓い、忠誠を誓うため指を刺した血をたらした酒盃を巡らせるとか、祝儀、葬儀、離別の儀に酒宴が催されています。ですから飲酒の機会は年に数回だったと言われています。

ところが江戸時代に入ると自由が謳歌され1升750文(いまの5000円相当)で毎日2合くらいは晩酌されていました。一升徳利がよく売れた時代です。