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あなたの糖尿病知識は少しおかしいです

 

2011.6.3

患者さんの中には糖尿病知識を間違ったままで覚えて療養している人をよく見かけます。もと東京女子医大教授の大森安恵先生が出した本「まちがいだらけの糖尿病の知識」が最近出ましたので、それに付け加えて解説いたします。

 

1「検診で尿糖が見つかったから糖尿病である」

糖尿病の病名は真ん中に尿の字の入ることで誤解されています。そのわけは尿糖のみられる病気は糖尿病以外にたくさんありますし、尿糖のみられない糖尿病もあります。健康人でも時には尿糖を認めることがあり、一般に腎性糖尿と呼ばれています。血糖値は高くないので普通の生活をしていてよいのですが、将来糖尿病になることが多いといわれています。

 

2「家族には糖尿病の人がいないから、糖尿病にはならない」

成人の糖尿病は2型糖尿病といって1型とは異なり。遺伝により発病します。今の家族には糖尿病の人がいないといっても、祖父母,曾祖父母のことは分かりません。昔の話ですから糖尿病があっても本人は自覚しないで他の病気で亡くなったのでしょう。また昔は食糧不足の時代ですから発病しないで済んだのかもしれません。からだの訴えをよく聞くとその兆候はあったと思います。

 

3「症状はなにもないから、糖尿病は軽いのだ」

まず初めに、糖尿病の治療がインスリンとか、内服剤とか、食事療法だけであっても治療のやり方で病気が重い軽いとは言いません。

インスリンを一日4回、5回注射している人でも重症糖尿病とはいいません。同様に内服剤だけの人を軽症糖尿病とはいいません。食事療法だけの患者さんでも年数が経つとなんらかの合併症が出るものです。合併症が悪化しても重症になったとはいいません。合併症は進行していくもので進行度、進行段階で病状を評価しています。

 

4「眼は見えるから、小出血は心配していない」

これはとんでもない誤解です。合併症の初期段階ではいずれの合併症にも症状は出ません。その代わりに徐々に進行して元に戻らない、回復しない身体になります。血糖コントロールをよくして病状を進めないようにすることが大切です。

 

5「血糖値とヘモグロビンA1cHbA1c)は正常だから心配はいらない」

長期間の血糖コントロールを良くしておくことは合併症の防止や進展防止であることは世界中で言われている定説です(国際糖尿連合)。しかしHbA1cと合併症の関係を数年間で調べた時と、数10年で調べた結果を一緒にして結論を出すことはむつかしいです。

患者さんの長い糖尿病人生の中でどの時期に、何年くらいHbA1cが正常であったかで正解とも誤りともいえます。欧州にUKPDSという有名な研究があり、厳しく治療すると合併症が少なく、厳しい治療をやめて普通の治療に戻しても合併症の発病が少ないといいます。この研究ではよい血糖コントロール良好に保っていた効果によるもので、遺産効果といっています。これとは逆に糖尿病を悪くしていたが、ある時から血糖コントロールを良くしても悪かった時の影響は何らかの合併症を引き起こす負の(マイナス)遺産効果のみられることがあります。実際の診療では10数年間も糖尿病を悪くしたり,良くしている時の結果を見ることは困難です。

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