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 国内の糖尿病診療における改変予定

 

2012.1.07

今年は糖尿病診療において改正される予定事項が幾つかありますので混乱が起きないように今からお知らせします。

第一は診断や病状経過で用いられているヘモグロビンA1cHbA1c)の国際標準化についてです。HbA1cは約50年前に測定原理が発見され、始めはHbAとして用いられてきました。しかしこの測定系では数値のバラツキ、血糖値を正しく反映していないということで、さらに精度の良いHbA1c測定法が確立され30年たちました。ところが海外の患者さんを診療したとき、研究や学会発表で海外のHbA1c値と比べると日本の数値は低めに出されています。

1995年に国内の各研究者が集まり「HbA1c標準化プロジェクト」が設立され数値の国際化に向けて検討されてきました。それによると日本のHbA1c値(JDS値)は海外(NGSP)と比べ0.4%低くなっています。この改変は20107月からの糖尿病研究、学術論文や学会発表ではこれまでのHbA1c値に0.4%を加えた成績で発表されています。したがって診療、診断も今年半ば以降で改訂されるものと思われます。糖尿病診療における目標HbA1c6.5%は6.1%に変わり、6.5%で維持している方は6.9%にかわります。日本糖尿病学会で目標値を6.9%に改変するか否かは今のところ明らかにされていません。ちなみに米国では診療目標HbA1c値は7.0%とされています。またHbA1cの呼び名もA1cだけとなります。

その次は食品交換表の改訂です。今の食品交換表は1965年に発刊され第6版となります。適正なエネルギーと栄養バランスの2点を主眼としています。一方米国は1993年のDCCT研究でT型糖尿病に食事中の炭水化物摂取量に対応したインスリン量を決めていくカーボカウントをとり入れることにより血糖値の改善を認めました。つまり食事中の糖質量を計算してインスリン注射量を決めていくやり方です。血糖値は炭水化物量で上がり、一日摂取エネルギーの60%は炭水化物ですから、炭水化物摂取量にあわせて血糖値を論じるのは理に適っています。それで日本の「食事療法検討委員会」はカーボカウントを考えて糖尿病食をとろうと考えている人のために、カーボカウントの手引きとして表1と表2の糖質含有量を記載する予定でいます。誰もが低炭水化物食をとると栄養のバランスがくずれ、将来の体つくりのために良くありません。

最後に治療法の進歩とその改変について述べます。薬剤による治療法は法律で決められているものではなく、検査で決まるものでもなく医師の判断で決まります。日本では2009年から新薬としてインクレチン関連薬が診療に使われるようになり、日本中で世界中で盛んに使われています。この薬剤は内服剤(DPP-4阻害剤)と注射剤(GLP-1)に分かれており、内服他剤と併用でき、昨年10月からはインスリンとの併用も可能となりました。インクレチンを用いることにより外来患者さんのHbA1cは以前と比べ0.5から0.7%低下されていると思われます。従って今年改変される目標HbA1c6.5%は容易に6.1%になりえると考えます。

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