「知って得する血糖値を下げるあの手この手」 〜食事の基本から最新の話題まで〜
2012.12.16 11月14日、世界糖尿病デ−において「食」をテ−マに講演を行いました。当日の内容を記載させて頂きますのでご参考にしてみて下さい。 Q1. 太っている人は、標準体重まで減らさなければいけない? A.× 腹囲を1cm減らすことが、内臓脂肪を約1kg減らすことに相当します。ベルトの穴1つ分(3cm)減らすことで内臓脂肪を3kg落とすことになりますので、まずは、現体重の5%減らすことを目標にしてみましょう。 Q2.朝食を抜くと昼食後の血糖が上がりやすい? A.○ 朝食を抜くと、前の晩から昼食までは血糖値の低い状態が長時間続き、次の食事で急上昇します。インスリンの生成、分泌が乱れてしまい正常な血糖値のコントロ−ルが出来なくなります。また、肥満の人は、絶食時間が長くなることでインスリンを効きにくくする「遊離脂肪酸」がたくさん出るためです。 Q3.同じエネルギ−の食事を摂れば、血糖は同じように上がる? A.× 食べる物によって、血糖の上がり方は変わります。食後すぐに血糖値を上げるのが炭水化物(糖質)です。蛋白質は、食後2〜4時間程で血糖値を上昇させ、脂質は食後4時間以上かけて血糖値を上昇させます。 Q4.そうめんは、あっさりしているので血糖が上がりにくい? A.× そうめんの原料は小麦粉、つまり炭水化物(糖質)ですので血糖は上がりやすいです。また、春雨の原材料もでん粉なので炭水化物(糖質)です。 Q5.塩せんべいは、甘くないので血糖は上がりにくい? A.× 塩せんべいの原材料は、餅米です。餅は、炭水化物(糖質)なので血糖は上がりやすいです。「甘くないから大丈夫」と思っていると、血糖が上がってしまうので要注意です。 Q6.あんぱん(約300kcal)とフライドチキン(約250kcal)、どちらが血糖を上げるでしょうか? A.あんぱん どちらもエネルギ−量は、それほど変わらないのですが、あんぱんには炭水化物(糖質)が多く含まれているので、血糖上昇が早いのはあんぱんです。 Q7.炭水化物(糖質)は摂らない方が良い? A.× 1)糖質を摂らないと、エネルギ−として利用出来ないので代わりに体内の脂肪が分解されてエネルギ−として利用されます。こうして、脂肪を燃焼してやせることが出来ますが、脂肪分解の際にケトン体が産生され、ケト−シス(ケトン体が蓄積した状態)が起こりやすくなります。糖質制限によるケト−シスが人体に及ぼす影響は明らかではありませんが、人体に好ましくありません。 2)糖質制限食とは、糖質の多い食品(米、パン、麺など)を減らすことにより、血糖値の上昇を防ぐ食事療法です。糖質を減らせば減らすほど食後の血糖値の上昇を抑える効果が期待できますが、長期間にわたる厳格な糖質制限食は、蛋白質と脂質の摂取量が増えるため腎機能の低下や動脈硬化のリスクを高めます。 3)糖質は、どの位まで制限していいのでしょうか? 2012年5月の糖尿病学会年次学術集会のディスカッションにおいて、「1日130g、あるいは摂取エネルギ−の30%が最低摂取量」とすることが提言されました。 1日130gとは、食品交換表に基づいた配分で摂った場合、1食あたりの米飯は70gになります(糖質は、表2〜調味料まで各グル−プに含まれているため)。 4)食べ方の順番や調理の工夫で食後高血糖を防ぐことが出来ます。 ■野菜から食べる 食事の最初に野菜を食べると、食後の血糖値の上昇を緩やかにすることが出来ます。 ■食物繊維の多い食品と組み合わせる。 野菜、海藻、きのこ類など食物繊維が多い食品は、食後の血糖値の上昇を緩やかにする働きがあります。 ■穀類は、精製度の低いものを選ぶ。 玄米や麦ごはん、雑穀、ライ麦パンなどは食物繊維を多く含むため、白米や食パンに比べて食後の血糖上昇は緩やかになります。又、1口ずつゆっくりよく噛んで食べるとさらに効果的です。 ■調味に酢を使う。 酢に含まれている酢酸が消化を遅くするため、食後血糖上昇は緩やかになります。酢飯、酢の物、出来上がった料理に酢をかけるなど、酢を積極的に摂り入れましょう。また、レモンなどの柑橘類の絞り汁をかけてもよいでしょう。 ■牛乳や乳製品を一緒に摂る。 乳製品は、胃と小腸の粘膜壁に濃い膜を作り食べ物の消化吸収をゆっくりするため食後血糖上昇が緩やかになります。食事の前に牛乳を飲むことも食後高血糖の予防になります。 Q8.お酒を飲みたい時、減らすのは米飯?それとも油? A.油(脂質の多いつまみ) アルコ−ルは、脂質の代謝効率を下げる作用があるため長期間飲酒することで、肝臓に脂肪が蓄積しやすくなります(脂肪肝)。そのため、脂質の多い食事を摂ると脂肪肝のリスクが高くなります。脂肪肝になると、肝臓で糖を蓄える機能が低下し血中に糖が流出しやすくなるため、高血糖になります。いずれにしても、飲みすぎ食べ過ぎには気をつけましょう。 以上簡単にまとめましたが、情報に流されて間違った食事をしないように、いつでも栄養士の所へご相談下さい。
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