看護部師長
畑 英子
横浜で開催された学術集会に看護師の立場から参加しました。印象に残ったひとつが、持続血糖モニタ(CGM)の普及に伴いインスリンポンプ(CSII)の導入を試みる施設が増えていることです。CGMは自己血糖測定(SMBG)と違い、24時間持続的に血糖の測定が出来るため、食事・運動・ストレスによる血糖変動や基礎インスリンの分泌変動が評価出来ます。インスリン4回打ちの強化療法を行う場合、追加インスリンが一定量だと低血糖を起こすことがあり、生理的なインスリンの基礎分泌を模倣し、適量の追加インスリン治療を行うのにはCSIIがベストだということです。CSIIは主にT型患者さんに導入されますが、ある施設では血糖不十分な全糖尿病患者500名中、同意を得られた16名にCSIIを導入した結果、技術習得困難で断念した高齢2型患者2名を除き、ほぼヘモグロビンA1Cが改善したと興味深い報告がありました。当院でもCGM導入計画があり、自己研鑽を重ねていきたいと考えます。
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看護師
谷地
史子
来春改訂出版される食品交換表第7版では、新たにカーボカウントについて記載されると報告がありました。全糖尿病患者が対象となる、基礎カーボカウントは@血糖と糖質、炭水化物の関連について学ぶA適切な炭水化物、糖質量を摂取し血糖コントロールをするというものです。Aに関しては、従来の食事療法の食事量とバランスを考えた食事摂取により、既に適切な炭水化物量の摂取が行えているということです。そう考えると比較的馴染み易いものと感じました。
また、TVなどで話題の低炭水化物食は、血糖値は低下するものの高脂肪食摂取ととなり動脈硬化の進行を認め、糖質制限を厳格にするほど心筋梗塞や癌の死亡率が上昇したということです。低炭水化物食や極度な糖質制限にはまだ注意が必要であると報告されていました。
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薬剤師 佐々木敦子
今回の学会における私のテーマは、インクレチン関連薬についてでした。この薬は2,3年前に発売になった糖尿病治療薬でも新しい薬なので、この薬の特徴や全国各地の先生方の使用成績(どんな患者さんにどのタイミングで)など去年の札幌での学会発表に比べ、より傾向がわかりました。血糖値が高すぎる患者さんは入院して糖毒性を取ってからでないと効果が少ないようです。内臓・皮下脂肪の減少効果・血中脂質を下げる効果、味覚の変化が出る、の発表もありました。誤解を恐れず皆さんへ「小ネタ」を披露しますと、血糖降下薬メトグルコに癌抑制効果がある事、睡眠時間が長すぎても短くても死亡率が上がる事、またLED電球は太陽と似ている波長を出すため使う場所によっては体内時計を狂わせ睡眠障害の原因になるようです。治療を中断する患者さんは働き盛りの50歳代男性が多く、その理由はご自分の病状理解が無いことに基因しています。また、日中血圧が正常でも夜中高い可能性のある事、穀物からの食物繊維やマグネシウム、魚の摂取は糖尿病の発症予防になるという発表などがありました。
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看護師 高嶋 睦
横浜で開催された学会では、多方面の分野から糖尿病関連の内容を多数出題していました。興味深いもののひとつに、『糖尿病の幕開け』というシンポジウムがありました。「糖尿病の治療は進歩している反面、医学が科学化し患者の検査データしか見ていないのではないか。」「同じ治療法でも同じ結果にならないのは、人の反応や行動が関係している。」との説に、医療の対象は人間だということを再認識させられました。もうひとつは、『自己血糖値測定は、なぜマンネリ化するのか』というセミナーで、「自己血糖測定している人の多くは、ただ測っているだけで活用しきれていない。短期間で中断する。」という報告です。それは理解不足・やらされ感・血糖値を振り返る事ができない等であり、原因に医療者側の自己満足を指摘していました。共通することは、患者不在の医療になっていないかということです。最新情報を提供する場で、最も基本的な事を考えさせられたひと時でした。
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糖尿病専門医 坂井恵子
皆さんにお伝えしたい3テーマについて報告します。一つは糖尿病性腎症の治療です。最新治療薬というものはありませんでしたが、食事療法の重要性についてのシンポジウムに参加しました。一般的に糖尿病性腎症が進行すると、塩分制限・タンパク質制限の食事療法になります。蛋白制限の程度については、各施設で厳しさが多少違って、0.6〜0.8g/標準体重としているところが多いようです。また、腎機能障害が軽度では薬物の効果が大きいのですが、腎機能が低下した(GFR15以下)状態では、食事療法が大変効果があり透析を遅らせることが出来ると報告している施設もありました。その他の施設ではより早期腎症からたんぱく質制限をした方が透析になりにくいと報告していました。二つ目は、新たな糖尿病治療薬SGLT2選択的阻害薬についてです。この薬剤は尿中の糖排泄を増やし、体重が減少し、脂肪細胞の重量が減ったと報告され、国内では治験が行われており将来皆さんも使用する機会があると思われます。三つ目は、妊娠糖尿病の新しい管理の仕方について報告を聞きました。昨年10月妊娠糖尿病の診断基準が改定され(75g糖負荷検査にて空腹時血糖92mg/dl以上、60分血糖180mg/dl以上、120血糖153mg/dl以上のいずれか1ポイント以上で妊娠糖尿病と診断)、妊娠糖尿病と診断される妊婦さんが今までの約4倍になると多施設の報告がありました。それによると、1ポイントだけが異常であった比較的軽度の妊娠糖尿病であっても、出産までにインスリン治療が必要である患者さんが十数%見られるとの事で油断なく出産まで管理する必要性について報告されていました。
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