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食事療法におけるカーボカウントと

       糖質制限食の考え方

                                 2012.8.03

■ 糖尿病患者さんにおけるカーボカウントと糖質制限食について

1.カーボカウント

Carbohydrate Counting(炭水化物計算法)を略してカーボカウント法と呼びます。糖尿病における食事療法の一つの方法です。食事に含まれる成分の中で、炭水化物が強く血糖値を上昇させます。脂肪やたんぱく質の血糖上昇は徐々に起こるので、食事中の炭水化物を計算することに注目した食事療法です。欧米ではこの考え方は普及していますが、日本では未だ普及していません。しかし、食後高血糖を是正する重要性が認識されるようになり、また最近使えるようになった超速効型インスリンの作用時間が炭水化物の血糖上昇時間に適合することから、カーボカウントが最近少しずつ取り入れられてきています。しかし、現在使われている食品交換表は「エネルギーコントロールを中心とした血糖値・体重管理」や「食事のバランスなどの生活改善」を中心とした視点で考えられているのに対し、総摂取カロリーを勘案しないカーボカウントの導入は肥満に繋がるとの危惧もあり、表1日本糖尿病学会でも、来年春頃には食品交換表を用いたカーボカウントの手引きが出版される予定となっています。

時々「カロリー(エネルギー)の高いものは血糖が上がる」という間違った考えをしている人がいますが、血糖を上昇させるのはカロリーではなく主に炭水化物です。ですから炭水化物を毎食一定量とるようにしたり、一日の炭水化物を取り過ぎないように調整することによって血糖の上昇を抑えることが出来るのですが(逆に言うと炭水化物のみ調整したら、その他の脂肪やたんぱく質はいくら食べてもいいということになりますが。)このやり方は、全ての糖尿病患者さんに必要なものではなく、基本はエネルギーとバランスを考慮した食品交換表を用いた食事療法だと思います。さらに利点欠点をふまえた上で、個別の食事療法として、カーボカウントも一つの選択肢としてみると良いと思います。カーボカウントを加味した食事療法の例を示します。

(症例) 30歳の事務系会社員のAさん場合、身長172cmで体重は 78 kg です。標準体重は 65 kg。一日の摂取エネルギーは 65×30 = 1950 kcal です。このうち 55〜60 %を炭水化物で取ることが推奨されていますので 60 %とすると、1950×0.6 = 1170 kcal、これを、炭水化物1gが4kcalなので、4kcal/gで割ると炭水化物は一日 292gになります。つまり292 = 290g= 29カーボ(1カーボは炭水化物 10〜15gですが計算しやすい 10gとしている施設がおおいです。)になります。つまり、29 カーボの炭水化物を1日にバランスよく食べれば良いということになります。例えば朝8カーボ昼9カーボ3時のおやつ(果物や牛乳など)2カーボ、夕食に10 カーボというように振り分けます。血糖が上がりやすい時間帯にカーボ量を減らしてみるのもよい場合があります。

表 1 食品交換表とカーボカウントのメリットとデメリット

  食品交換表 カーボカウント
体重管理 有 効 無 効
栄養バランス 有 効 無 効
計算方法 煩 雑 煩 雑
食後血糖コントロール 困 難 有 効
次の食前血糖コントロール 困 難 バランス良く食べれば有効

 

2.糖質制限食

最近糖質制限食の本が書店に並んだり、また、患者さんの中でも「夕食時、ご飯食べていません」と独自の糖質制限食を実践している方もいらつしゃいます。血糖のみに注目して行う食事の仕方です。極端に制限することによって健康を害することもあるので、今年春に行われた日本糖尿病学会での「適切な食事中の糖質量は?」というセッションで述べられたことをお知らせします。

1.最低でも炭水化物は1日130g(一食当たり40g)は必要。

2.極端な糖質制限により、血管の動脈硬化が進行したという報告があります。

糖質を制限することにより、その代わりに脂肪とたんぱく摂取量が増えたためと考えられています。

3.動脈硬化が進行しないようにするために、たんぱく質や脂肪の「質」を考えなくてはなりません。

4.腎臓が悪い人は注意が必要です。(たんぱく質の摂取量が増える可能性があり、腎障害を引き起こします。)

5.食事の糖質(ご飯・パン・麺類等)ばかり減らして、おやつ(単純糖質)が増えては意味がありません。

6.野菜をしっかり食べること。

糖質制限に興味のある人は個人栄養指導によりしっかり勉強して健康を害さないように実践してください。

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