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平成25年度日本糖尿病学会(熊本)に参加して

 

2013. 6. 8

毎年恒例の日本糖尿病学会が5/16,17,18日の3日間熊本市で開かれました。当院からも「新しいインスリン療法」についての演題発表を行いました。今年も発表演題数が多く、海外からの英語発表も多く学会全体の発表をお知らせするのは難しいので、患者さんに関心深いものをお話しします。

まず初めに基礎医学研究として興味深いiPS細胞研究の実情を述べます。iPS細胞を誘導してインスリン産生細胞を作成した報告は国際的に多数あるようです。しかしインスリンを充分に産生する細胞を効率よく大量に作成するところに壁があるようです。なにしろ人間一人の膵B細胞は100万個といわれていますから、とてもそこまでのB細胞大量産生はできません。B細胞を大量作製するための生物学的化学薬剤を見出して、効率が2倍向上したと報告しています。

次に最近話題になっている「糖質制限食」と「カーボカウント」の話です。炭水化物(糖質)の一日摂取量の上限は決まっていますが、下限についてはどこまで制限してよいのか明らかにされていません。つまり糖質をいくらでも制限してよいものではありません。糖質制限することによって心筋梗塞、腎臓障害、脳卒中、癌が明らかに増加することが報告されています。さらに患者さんは思い違いして糖質制限したエネルギーをたんぱく質、脂肪に転換して過剰に取ると、さらに弊害が大きくなります。

「カーボカウント」はインスリン治療者が糖質量を考えてインスリン注射量を決めるやり方で、アメリカ糖尿病学会では正しく用いることを勧告しています。

その他、患者の療養生活に応用できると思われる発表をお話しします。

@ 持続血糖測定器で運動効果を調べると、低強度の運動であっても長時間すると血糖低下効果が大きくなります。

A 野菜を先に食べる食事は食後高血糖の抑制効果が大きい。野菜100gで血糖値60mg/dl 下がる。

B 6分全力速歩、6分普通歩行の繰り返しは血糖値低下の効果が大きい。

C 国際共通の肥満遺伝子が決定された。

内臓脂肪だけ、脂肪肝だけの異所性脂肪蓄積のあることが分かった。