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糖尿病性腎症の治療(腎不全治療)のながれ

 

2014. 6. 20  

糖尿病腎障害は患者さん誰もがなるわけではありませんが、糖尿病になって5年から7年位から起り始めます。ヘモグロビンA1c値が高くなる人みながなるわけでもなく、逆に低い人でも発症することはよくあります。網膜症など他の合併症が始まっている人は、まもなく腎症を発症するように思います。

糖尿病腎症の病状は、腎症前期の第1期から第5期(透析治療期)まで分かれています。第2期は早期腎症期と呼ばれ、通常の尿検査では尿タンパクは出ていないのですが、微量アルブミンが尿に出てくる時期です。この時期に適切な治療を行えば腎症の改善が得られます。第3期になると常に尿タンパクが認められるようになります。この時期をしばらくへてから初めて腎機能の低下が認められ、血清尿素窒素やクレアチニンが上昇し、高血圧、むくみ、貧血などの症状が現れます。

腎臓の負担を軽くするための薬物治療としては @まず血圧をしっかり下げることが重要です。130/80mmHg未満をめざすためには降圧薬の併用療法が必要となってきます。A体内にたまった老廃物を除去するため吸着剤(クレメジン)を併用します。B造血ホルモン(エリスロポエチン製剤)を定期的に注射し貧血を調整します。C尿を出してむくみを改善するために利尿剤を併用します。これらの治療で残された腎機能の維持をはかりますが、血清クレアチニンが2mg/dlを超えると風邪などのちょっとした体調の変化でも容易に腎機能の悪化がみられるようになります。

やがて第4期(腎不全期)となり腎臓の働きがいちじるしく低下し、体内の余分な水分や老廃物を体外に出すことができなくなると透析治療が必要となります。糖尿病腎症は透析導入となる他の病気のうちで最も頻度が高く年々増加しています。腎障害が進んでくる第3期に入ると、糖尿病食に加えて腎臓食も考えねばなりません。簡単な要領をいいますと蛋白制限と塩分制限することで蛋白質食品や塩分と加工食品が制限されてきます。それ程むつかしい話はありませんが、肉や魚のサイズが小さくなる、料理の塩味がなくなることに慣れるだけです。詳細は栄養士とご相談下さい。

透析治療には血液透析と腹膜透析の2種類がありますが、多くは血液透析が行われています。透析導入の時期は「自覚症状」「日常生活の制限の程度」「腎機能の数値」の3項目から総合的に判断します。血液透析の継続のためにはシャントという血管縫合の手術が必要となりますが、シャント作製後は発達を待ってから(23週間程度)ではなければ使用することができません。シャントを持たない状態で透析治療が必要となれば、首や足の付け根からカテーテルとうい管を挿入して緊急で行うこととなります。その後も透析治療を継続するためには長期のカテーテル留置が必要なため、感染症の危険が増し入院も長引きます。このためシャント手術を前もって行い、いざ透析治療が必要となったときには、自身のシャントを使用しての透析導入が理想的です。

糖尿病腎症は血清クレアチニン値がそれほど高くなくても肺うっ血(心不全)による呼吸困難により緊急で透析治療が必要となることが多く、より早めの対応が望まれます。当院では経過にもよりますが、血清クレアチニンが2mg/dlを超えた時点で一度腎臓内科への受診をお勧めしています。ぜひ、早めの対応を心掛けてください。                             

文責 石井 勝久

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