<戻る

循環器疾患で使用される治療薬について

 

2014. 8. 25  

虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)の治療薬は大きく分けて二つに分けられます。ひとつは冠動脈を拡げたり、冠動脈のけいれんを予防するもので、狭心症の発作を抑える効果があります。硝酸薬やベータ遮断薬、カルシウム拮抗薬などがあります。もうひとつは血管を詰まらせる血のかたまり(血栓)ができないようにする薬で抗血小板薬、抗凝固薬などがこれにあたります。

(1)高血圧には降圧剤(血圧を下げる)薬を使用します。代表的なもにはアンジオテンシンU受容体拮抗薬(ARB)、カルシウム拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACI)、利尿薬、ベータ遮断薬などがあります。血圧の状態や合併症、年齢などを考えて選びますが、糖尿病合併例ではARB、ACIが第一選択薬とされています。降圧剤を2、3種類併用することもあり、2種類の成分を一つにまとめた配合薬も使用されています

(2)不整脈の薬物療法は、不整脈の種類により大きく異なります。出現頻度の高い不整脈には期外収縮、心房細動、上室性期外収縮などがあります。これらに対しては心臓のリズムを整える薬、血液をサラサラにして脳梗塞を予防する薬などが使用されます。

 

次にそれぞれの薬物の効果について説明します

@硝酸薬−狭心症の発作時には、ニトログリセリンの舌下錠やスプレーが使用されます。即効性があり、通常の狭心症であれば2〜3分で胸痛は改善されます。効果の持続時間が長い除放剤、テープ剤は発作の予防に用います。

Aベータ遮断薬−運動時の血圧上昇や脈拍の増加を抑えます。循環器系の過敏な活動を抑え、緊張を和らげることで心臓の負担を軽くする効果があります。冠動脈に狭窄を有する労作制狭心症がよい適応となります。心臓機能の低下した(心不全)には少量から使用します。

Bカルシウム拮抗薬−血管を拡げ、冠動脈のけいれんにより起る安静時狭心症に効果があります。血圧を下げることで心臓の負担を軽くします。

C利尿薬−体内の余分な塩分や水分を尿として出す薬です。尿量が増え血圧が低下するため、心臓の負担を軽くする効果があります。心不全、腎不全にも使用されます。

DアンジオテンシンU受容体拮抗薬−体の中には血圧を高くするホルモンも備わっており、この仕組をレニン・アンジオテンシン系といいます。この中のアンジオテンシンUというホルモンの働きを抑えることで血圧を下げる効果あります。腎臓や心臓を保護する効果も期待され使用されます。

E不整脈治療薬−心臓のリズムを整える薬には、脈の乱れを治療する薬と脈拍を下げる薬とがあります。脈の乱れを治療する薬は、抗不整脈薬といわれ、心臓の電気信号を直接変化させる作用があり、不整脈の予防効果、停止効果をもっています。ベータ遮断薬、カルシウム拮抗薬、ジギタリス製剤があげられます。症状のひどい時だけ服用する場合(屯服)もあります。

F抗血小板薬−血液中の血小板の働きを抑えることで血のかたまり(血栓)ができるのを防ぎます。冠動脈ステント留置やバイパス手術などの処置を受けた患者さんは継続が重要です。

G抗凝固薬−心臓内で血栓ができるのを防ぎ、脳梗塞を予防します。このうちワーファリンは古くから使われている薬ですが、毎回採血して投与量の調節が必要となります。また、ビタミンKを多く含む食品、納豆、クロレラ、青汁などは食べられず、風邪薬や痛み止めなどの薬の影響を受けるなどの不便さがあります。細菌では投与量の調節が不要で食品や薬剤の影響が少ない、ブラザキサ、イグザレルト、エリキュースなどの治療薬が広まってきました。

(文責:石井勝久医師)

 

戻 る