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特別講演   見え方大丈夫?

 

2014.12.4

本日は両目見え方大丈夫?ということから話してみましょう。人間の目は二つあります。だからといって、片方見えなくてももう一個あるからいいやと言うわけにはいきません。当たり前ですね。しかしながら、片方が見えなくても気が付かな講演する永坂医師い事がままあります。

話はそれますが、動物・生物の中で両眼視をしている種類はそう多くはありません。霊長類(猿・ゴリラ・人間)猛禽類(鷲・鷹・フクロウ)肉食獣(虎・ライオン)くらいなのですが、これらは目が平行についていてそれによって両眼視をしています。でも反面そのせいでお互いの目が他方をカバーすることによって一方が少しくらい見えにくくなったからといって、自覚症状が出にくいとういう欠点にもなります。

余談ですが、私がまだ大学病院に勤務していたとき、ある患者さんが家族に付き添われて来院しました。家族は「家のおじいちゃんどうも目が変なみたいだ。」というので見てみたら、顔を見た瞬間にこの方は左目が見えてないな、というのが分かりました。それで、私は患者さん本人に「いつから左目見えにくいですか?」と聞いてみました。すると本人は「いや、別に問題なく見えてるよ。」と平気で言うんですね。それで、見えてる方の右目を隠してみると、当然「そうしたら見えないよ」また遮蔽を取ると「ちゃんと見えている」結局その方にとっては両目での見え方・視力が、見るということなんですね。これが馬や牛だったら、目は横についているのでそれぞれの目が見る範囲を分担しているので、片方が見えないと半分が見えなくなり気が付きやすいと思います。 また、目の中にはものを見る中心部・黄斑部というところがあって、そこの周り300μm=0.3mmの範囲でしか物を見ていない、という実験結果があります。だからそこさえ傷まなければ視力・見え方には影響しないので、さらに自覚症状が出ないのです。

このことは生活に関しては大変有利に働きます。例えば乾電池なんですが、以前はマンガン電池というものだったんですが、これは少し使うと少し電圧が落ちるので、機械が100%の能力を発揮できる時間が少なかったのですが、今はリチウムイオン電池というものに変わりました。この電池のすごいところは、時間がたっても電圧が落ちないということです。それによって、ずっと機械が100%の能力を発揮し続けることができるのです。目も同様で、少し悪くなったら少し視力が落ちるとかだと自覚症状としてわかりやすくていいのですが、それではすぐに生活に支障が出てしまうので困ってしまうんですね。だから、目はギリギリまで頑張ってくれているんです。ちょっとくらい目の中で何かが起きていても、きちんと見ることができることによって生活には影響が出にくくなっているんです。

 糖尿病網膜症でも、この物を見る中心の黄斑部が傷むまで自覚症状が出にくいということのせいで、どうしても発見が遅れてしまいます。ですから、いつも言う事ですが、糖尿病・血糖値の調子が良いから、見え方が変わりないからと言って油断しないで、定期検査をきちんと受けてください。では、ここでまず前半の見え方大丈夫?という話を終わります。  

   

 ■目の「10の質問」の答え

1.

自覚症状がなくても、定期的に検査をしなければならない 理由は、次回受診の間隔はどれくらいですか?

  先にも言いましたが、糖尿網膜症はともかく自覚症状がないので、見えているから大丈夫と思っていると、知らない間に目の中では病気が進んでいて手遅れになってしまう可能性があるので、必ず定期検査が必要です。その間隔は病状・程度によって違うので、その時その時ドクターに聞いて下さい。

2.

右眼は出血ありで視力低下、左眼は出血なしと言われたが・・今後眼は心配ないですか?出血斑が消えたら治ったと考えて良いですか?

  右目が出血したということは当然左目も同じような可能性があると考えます。糖尿病は目の病気ではなく全身の病気なので、当たり前ですが症状がなくても左右同じと考えます。また、出血斑が消えたからといって治ったと考えないで下さい。一度でも出血したということは、血管が弱ってしまっているということなので、油断するとまたあちこち出血してしまいます。

3.

レーザー治療とは何をしているのですか?痛くないのですか?

  糖尿病網膜症になると血管が弱ってしまうために、破けやすくなったりつまり易くなったりします。破けてしまうと解るとおり、出血ですね。つまってしまうと、その部分・範囲は後後に必ず悪くなります。具体的には、新生血管といって破れやすい悪い血管が出てきます。この血管は放っておくと眼球内に出血を起こし失明につながります。だからその新生血管が出てきそうな範囲を先にレーザー光線で潰しておく。というのがわかりやすい考え方だと思います。 また、痛みについては個人差ですが・・・、痛いみたいです。

4.

レーザー治療をしたのに、視力が悪くなった・・・なぜ?

  レーザー治療というのはあくまで悪くならないように止めるものです。また、目に負担をかけるものです。だから糖尿病網膜症だからといって、無闇やたらとレーザーを当てていいというものではありません。目に負担をかけるため、レーザーを当てることによって一時的にあるいは少し視力が落ちることがあります。

5.

糖尿病の検査でなぜ眼底を診るのか・・・何を診ているの?瞳を開く理由や、そのときの注意点は?

   眼底検査は眼球・目の中を覗いています。目の中の膜(網膜)に出血がないか、血管が弱って血の巡りが悪くなっている部分がないかを診ています。そして、場合によっては瞳を開く目薬を使って検査をするわけですが、瞳を広げることによって広い範囲、隅の方まできちんと検査をします。そのときの注意としては、その目薬を使うとピントを合わせる力が落ちてしまうので、目がぼやけてしまいます。ですから、瞳を開く目薬を使った日は車の運転はできません。見えているから大丈夫とか、近くだからいいと言わないで、その日は車の運転はやめて下さい。事故というのはそういう油断した時に起こるものです。

6.

視力が落ちてもメガネをかけて見えていたら大丈夫ですか?

  全くあてになりません。何回も言いますが、自覚症状がないので見えているから大丈夫ということは全くありません。

7.

メガネを作る時に眼底検査をする理由は?

 まずメガネを作る原因は視力が落ちたということですが、それが本当に近眼・乱視・遠視によるものかを検査します。当然糖尿病網膜症によるものだったりしたら、メガネをかけても視力は上がりません。次に、メガネの度数を合わせる時に、瞳を開く目薬を使って検査することによって正確に本人の近眼・乱視・遠視程度を測ることが出来るからです。

8.

ブルーベリーは網膜症に効きますか?

  効きません。といってしまうと一言で終わってしまうので、もう少し詳しく話しましょう。ブルーベリーの中には、ポリフェノールとアントシアニンというものが含まれていて、これが目にいいとされています。しかし、ブルーベリーに含まれるこの物質は少しで、体で吸収される量はさらに少ないです。そして、吸収されたポリフェノールとアントシアニンが、体中をめぐって目に行き、さらにそれが網膜の細胞にとどくとなると、ほんのほんの微量になります。ですから、トラックに一台のブルーベリーを毎日でも食べればいいかもしれませんが、普通に食べる量ではほとんど意味はないです。でも、体に悪いわけではないので、気長に食べ続けるのは悪いことではないと思います。

9.

目薬のさし方、保管法の注意点は? 開封したらいつまで使用できますか?

  目薬のさし方ですが、きっちり目に入らないとダメだと思っている人が多いですが、そんなことはありません。ベッドとかソファーに横になって、目のあたりにボチョボチョっと垂らして、瞬きをしてれば目に入るのでそれで十分です。ただ注意点は目の周りについた薬はきちんと拭いてください。目薬の中には例えば目の周りが黒ずむとか睫毛が濃くなるというような副作用があるものがあるので、きちんと拭き取ることが重要です。保管方法は、例えば光に当てないとか薬によって違うので、きちんと聞いて下さい。使用期限はそれぞれ目薬の入れ物に書いてありますが、蓋を開けたら一ヶ月です。冷蔵庫に入れようが、それは変わりません。

10.

眼科管理手帳の使い方は?

  佐々木内科の眼科では全員に糖尿病眼手帳をお渡ししています。この手帳は日本全国の眼科どこでも通用します。中には検査の経過を記入します。したがって、いわゆる目の個人カルテです。例えば次は三ヶ月後にまた検査ですよと言われたら必ず佐々木内科の眼科に来て下さいということではなく、どこでもいいから検査を受けて下さればいいということです。その代わり必ずこの手帳を出して検査結果を記入してもらいます。そうしたら今までどうだったか経過が全てわかるようになります。また、特に内科の糖尿病手帳と一緒に持ち歩くことをお勧めします。そうしたら、どこか違う内科にかかった時も、内科の先生に「眼科にはかかっていますか?」と聞かれてもこの手帳を見せればいいし、また違う眼科にかかったとしても、眼科の先生に「今糖尿病の調子はどうですか?」と聞かれたら糖尿病手帳を見せればいいわけです。

 文責;永坂 嘉章

 

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