糖質制限食について
2015.3.12 糖質制限食とは、糖質の多い食品を減らすことにより血糖値の上昇を防ぐ食事療法です。糖質を減らせば減らすほど、食後の血糖値の上昇を抑える効果が期待できますが、糖質摂取0gが良い治療法とは限りません。食事としての楽しさが全く無くなりますし、安全性の面でも問題があるかも知れません。そこで、今回は糖質制限食について述べたいと思います。 健康な日本人(18歳以上)における糖質摂取量は、国民健康栄養調査では、1日240〜250g程度となっています。ここから、どの程度まで糖質を減らすのかが問題となります。では、どの食品に糖質が多く含まれているのでしょうか。さらにどのような食事の摂り方になるのか具体的に述べたいと思います。 1.糖質の多い食品 糖質を多く含む食品は、表1(穀類、芋類、南瓜、蓮根等)、表2(果物)、調味料、嗜好品です。表1、表2の1単位に含まれる糖質は平均約20gです。大福、ケ−キ、せんべい等のお菓子、ジュ−スも糖質の多い食品です。 2.1日の糖質量の考え方 日本糖尿病学会における糖質のエネルギ−比(食事に占める糖質の割合)は、50〜60%となっています。この糖質量は、1,600Kcalで200〜240g、2,000Kcalで250〜300gになります。では、糖質制限食で考えてみるとどうでしょう。次に代表的な糖質制限食を紹介します。 @ アトキンスダイエット 1日の糖質量20gというレベルの極端な糖質制限をする減量法です。これに近いレベルの糖質制限食が「ス−パ−糖質制限食」あるいは「糖質ゼロ食」という名称で一部の医師により推奨されています。糖質のエネルギ−比(食事に占める糖質の割合)は10〜15%になります。 A 北里研究所病院における糖質制限食 1食あたりの糖質量20〜40g、1日量70〜130gを目安とした制限食です。一般的に1日の糖質摂取量が50g以下でケトン体が産生されるとされていることから、糖質制限の下限は1食あたり20gになるため、結果、間食に10gを加え1日70〜130gに設定しています。糖質のエネルギ−比(食事に占める糖質の割合)は30%になります。 3.1食の糖質量40gとは 米飯70g+副食(表3+5+6+調味料)で糖質40gになります。副食に芋や南瓜など糖質の多い食品があると米飯は30gになります。通常、お茶碗1膳の米飯は約150gなので、米飯150g+副食では糖質は70gになります。 4.糖質だけ制限すれば、蛋白質、脂質は食べ放題? 基本的には自由ですが、合併症を予防して健康的な生活を維持するためには、次の点に注意しましょう。 @蛋白質 多く摂取したい場合は、魚を選びましょう。肉に偏らず、魚の摂取を増やすとともに、豆腐や納豆などの大豆製品、卵やチ−ズなどの乳製品も偏らないようにしましょう。 A脂質 多く摂取する場合は、植物性を選びましょう。動脈硬化の予防から、オリ−ブ油やシソ油、特に血中LDLコレステロ−ルが高い場合は、魚油の摂取を心がけ、マ−ガリンや肉の脂は控えましょう。 5.日本糖尿病学会発行の「糖尿病食品交換表」に従ってモデル食を示します。交換表では、炭水化物50%、55%、60%の例を示しています。ここでは、1日20単位(1,600Kcal)の具体例を示してみます。
6.最後に 糖尿病の食事療法の選択肢のひとつとして糖質制限食という考え方はありますが、極端な糖質制限食に対しては医学的な課題が残されています。特に腎機能が低下している人(尿に蛋白が出ている人)は糖質制限分のエネルギ−は高蛋白食になるため、腎臓に窒素排泄の負荷がかかる可能性は否定出来ないためお勧め出来ません。また、薬剤やインスリンの関係からもむやみに糖質制限を行うと低血糖の危険があります。必ず担当医師に相談してください。糖尿病の食事療法として、エネルギ−制限食、低GI食、順番ダイエット(野菜から先に食べる)、カ−ボカウントなど様々な食事療法がありますが、重要なのは、「安全で」「有効で」「楽しく」「続けたくなるような」食事療法です。幸せな糖尿病療養生活を実現出来るよう一緒に考えて行きたいと思っておりますので、気軽に栄養士のところへ入らしてください。(文責;大島理香子) ※参考文献:緩やかな糖質制限ハンドブック…山田 悟(北里大学北里研究所病院糖尿病センタ−長)
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