第58回 日本糖尿病学会(山口県下関市)
2015.6 総演題数約2800題のうち20%は新しい薬剤(DPP-4阻害剤150題、SGLT2
192題) 糖尿病について今後期待される話題を見てみますと @血液中の濃いブドウ糖を減らす工夫、A膵B細胞の再生、修復、移植、B合併症の防止、修復、C高血糖の合併症形成過程の阻止などがあります。 @に対しては最近2つの薬剤が発売されました(DPP-4阻害剤、SGLT2)、BとCは研究者のこれからの課題で期待します。そこでAに関しては次のような発表がありました。 B細胞による治療法として3つのやり方が検討されています。 1 膵臓移植 移植には事故死、病死、肉親からの膵臓が使われています。肉親からの場合は膵臓1/2切除で移植後は少し成長するようです。10年生存率は95.8%と報告されました。 2 ブタB細胞移植 30年前のインスリン注射は豚か牛のインスリンしかありませんでした。当然のことでブタ膵臓からランゲルハンス島を取り出してマイクロカプセル化して移植します。これによりビールス感染や免疫反応を抑え、免疫抑制剤も服用しないですみます。またブタのES細胞、 3 iPS細胞のB細胞作成 患者さんの血液10ccから幹細胞を取り出しそれをiPS細胞として90日間で膵細胞の素を作ります。さらにグルカゴンを分泌するA細胞も作成します。AとB細胞をマイクロカプセル化して身体に注入します。この研究はノーベル賞を受賞した京都大山中教授の下で精力的に行われています。 札幌から羽田経由で約6時間かけて下関市に入りました。下関市は思ったよりこぎれいな街で、NHK"花燃ゆ”にあるように多くの歴史物語があり平安時代から巌流島の宮本武蔵の戦いまで一代絵巻が繰り広げられています。もう一度ゆっくり観光してみたい街です。(文責;佐々木 嵩)
日本糖尿病学会年次学術集会に参加して 5月21-24日山口県の下関市にて糖尿病学会が開催され出席してきましたので、最近の話題について報告します。糖尿病学会は年々参加人数がおおくなり、ホテルやイベントホール・港に停泊させた船も含めた9つの施設で多くのポスター発表や講演が開かれていました。毎年話題は変わりますが、今年は「膵臓移植・再生医療」の話題に注目が集まり、「高齢化時代の糖尿病診療」「「新しい治療薬SGLT2阻害薬」の話題が多かったと思います。 今回はSGLT2阻害薬についてお話しします。この薬は約1年前に発売され当院でもこの薬で治療をうけている患者さんもおります。そもそも19世紀にドイツの化学者がリンゴの木の樹皮から抽出されたフロリジンという物質から開発された薬です。作用は簡単に言うと体内を循環している血液中のブドウ糖を尿から排泄させて血糖値を下げる働きです。多くの施設の血糖改善効果についての発表がありましたが、私がみた約10施設くらいの発表を総合すると1、HbA1cの低下:平均0.78%(0.4-1.3%低下)。インスリンや他の糖尿病内服薬との併用が報告されていました。2、体重減少:平均2.4kg減少(1.0-4.1kg) その他にも脂肪肝・脂質異常症の改善など良い面の報告がある一方尿から糖が沢山でるので夜間頻尿や脱水になったり、膀胱炎や腟炎の併発に注意が必要となります。特に高齢の方は脱水に気付きにくいので意識的に水分をとらないと心筋梗塞や脳梗塞を起こす危険性があります。(尿をみて色が濃くなったら「脱水」なので、喉が乾いていなくても水分をとってください)比較的若く、太っていて、水分がいつでも補給できる環境にいる人は良い適応かもしれません。 学会ではその他にも1対1の討論会があり一つのテーマに対して賛成が反対か述べるものもありました。例えば、 1.
1型糖尿病患者に対して運動療法は有効であるか、有効でないか 2.
腎障害の有無を尿中微量アルブミン検査は必要か不要か。 色々な先生の考え方があるものだと感じました。(文責;坂井 恵子) |
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