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新薬SGLT2阻害薬への期待

 2015.8.13

新しい糖尿病治療薬として登場したSGLT2阻害薬は発売されて1年が経過し長期処方も可能となりました。この薬の特徴や問題点などが明らかとなってきましたのでご紹介いたします。

従来の糖尿病治療薬は膵臓からのインスリンの分泌を増やしたり、筋肉や肝臓に働いてインスリンの効きを良くするのが主でした。一方、SGLT2阻害薬はインスリンとは無関係に、腎臓に働いて過剰な糖を体の外に出すことで効果を発揮します。

腎臓の働きは体内の代謝不要物を排泄しますが、腎臓に送られた血液中のブドウ糖も一度尿に出されます。しかしブドウ糖は栄養分として大事なものですから、再び体内に90%戻されます。このとき、ブドウ糖はSGLT2というたんぱく質を通って体内に戻ります。糖尿病患者さんでは、よりたくさんの糖を取り込むためにSGLT2の量が多くなっています。そのため、健康な人に比べて体内に戻る糖の量が増え高血糖がつづきます。そこでこの薬は、腎臓のSGLT2の働きを阻害することでブドウ糖が体内へ戻る量を少なくして、過剰な糖を尿に出すことで血糖値を下げる薬です。

この薬を使用すると個人差がありますが、1日当たり尿量が300500ml増え、尿糖として約80g(約300Kcalのエネルギーに相当します)が排出されます。このため、血糖改善以外にも、体重減少(平均で2-3kg減少)、血圧低下、脂質改善、脂肪肝改善などが期待されます。

次にこの薬剤を服用する際の注意点をお話しておきます。薬の服用により尿糖が増え尿量や尿の回数が増えるため、最も注意が必要なのが脱水症状です。適切な水分補給を心がけ、特に汗をかく夏場はより水分を多くとることが必要です。他には膀胱炎などの尿路感染症、性器感染症や皮膚の発疹などが副作用として挙げられています。尿路・性器感染症に関しては、毎日入浴し清潔を保つことが大切です。皮膚の発疹は投与開始早期に起こることが多いようですが、服薬を中止すると改善しあまり重篤になることはないようです。

実際の使用に関しては、患者さんは2型糖尿病で肥満傾向のある、腎機能に問題のない、比較的若い方が適応と考えられます。特に痩せたいという願望の強い方にはよい適応となりますが、投与開始後に食欲が増すことがあり、薬剤の効果を出すには、この時期に食事療法を徹底することが重要です。逆に、もともと痩せている方、腎機能の悪い方、脳梗塞の既往のある方、高齢者にはこの薬の使用は勧められません。

近年、糖尿病患者さんの肥満化が問題となってきました。今後肥満を合併した2型糖尿病へのSGLT2阻害薬の効果が期待されています。

 

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