平成28年日本糖尿病学会総会(京都)報告 2016.7.25 第59回日本糖尿病学会総会は15年ぶりに京都で行われました。会長は京都大学教授稲垣暢也先生が主宰されました。国内・国外の医療者及び研究者1600人が集まりました。メインテーマを「知の融合が拓く(ひらく)あたらしい糖尿病学」と掲げ糖尿病診療に携わる医療者ばかりでなく老年医学会、産婦人科学会、骨代謝学会、療養指導師認定機構など多くの共同シンポジウムが組まれました。その中で高齢者糖尿病に対するヘモグロビンA1c(HbA1c)治療目標を公示したものは朝日新聞紙上で取り上げられています。 特別講演には京都ならではの異色なテーマで、清水寺森清範貫主の「こころの法話―命こそ仏さま」と京都大学教授山極壽一氏の「ゴリラからみた人間のコミュニケーションと社会の進化」のお話がありました。時間がなく拝聴できなかったことは誠に残念でした。 多くの講演の中で特に興味を引かれたものは「糖尿病と癌のますます危険な関係」というテーマの講演でした。一般人と比べ糖尿病では肝癌、子宮癌、膵臓癌は2倍、大腸癌、乳癌は1.3倍の発病率となっています。さらにその治療面の話では抗癌剤が糖尿病を悪化する、糖尿病が新規発症するなど芳しくない話がありました。糖尿病患者の死因第一位は癌で34.1%です。 次は先に述べた高齢者糖尿病の治療と介護はどのようにするのがよいか、この学会の大きなテーマになっています。一般に高齢者糖尿病患者さんは認知症、うつ病、日常生活の低下、転倒、骨折、筋力低下が高頻度におこります。それに加えて低血糖が起こっていても症状が乏しく、本人は知らないで過ごしていることが多いといわれています。そこで低血糖、重症低血糖値を避けるためにHbA1c値の目標を高くしました。目標HbA1c値が高くなったから間食する、運動しないという意味ではありません。この値は重症低血糖を起こす可能性のある薬剤を服用している方の目標値です。軽度の認知症のある方はHbA1c8.0%未満です。 無理しないで7.0%を目指す人がいれば成人糖尿病者と同様に考えて良いと思います。 お知らせ 時が経つのは早いもので、当院は忙しい日々を過ごして35年経ちました。それに伴い糖尿病学の進歩も著しく展開され、先日の新聞には豚の膵B細胞を人に移植する臨床試験が国立医療研究センターで行ったと報道されました。いよいよ人間を対象とした再生医療が始まったといえます。 このことは予想を10年先取りしたといえます。 さて当院は昭和56年8月15日開院し今年で35年経ちます。そこで病院がこれまで歩んだ経過をお見せしたいと思います。いろいろ面白い話が沢山あります。 8月16日から2週間1階の廊下に写真展を開きますので是非ご覧になってください。
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