「食事の工夫で血糖を下げる」 〜インクレチンと食事の関係〜 NHKテレビ「ためしてガッテン」をご覧になったことはありますか。 これまでに放映された糖尿病をテーマにした番組をまとめた本が発行されました。その中から食事に関することを紹介します。 @腸内環境を変えると血糖値は下がる インクレチンという言葉を聞いた事がありますか? インクレチンというのは腸管から出るホルモンです。 膵臓は血糖値が上がったと察知するとインスリンを分泌します。 インクレチンはその前に食事の刺激で腸管から分泌され膵臓に作用してインスリンの分泌を促す働きをします。そのため食後血糖を早くから下げる効果があります。さらに肝臓からの糖の産生を抑える働きもあります。 私たちの腸の中には約100兆個にも及ぶ腸内細菌が住み着いていますが、そのうちのある腸内細菌はインクレチンを分泌する細胞を増やす働きがある事がわかってきました。良い腸内細菌を増やすためには水溶性食物繊維を食べる事が大切です。 水溶性食物繊維の多い食べ物とは、例えば 1野菜類:にんじん・たまねぎ・トマト・ごぼう等 2海藻類:わかめ・昆布・寒天・ひじき・めかぶ等 3キノコ類:えのきたけ・しいたけ・舞茸・しめじ・なめこ 4ネバネバ食材:オクラ・納豆 5穀物:麦ご飯・玄米ご飯・五穀米等 たまにこれらの食材を食べるだけでは効果は期待できません。 日常的に上記のような野菜のおかずを食べると血糖値が上がりにくい腸内環境を保てます。便通が良くなったり、便の量が多くなったり、体重が減ってくると、腸内環境が改善された証拠です。 Aもう一つは食事の順番です。 今までも「野菜を先に食べる」ということは皆さんも聞いたことがあると思います。最近関西電力医学研究所の矢部大介先生らにより明らかになったのは「野菜の次に魚(肉)を食べ、最後にご飯を食べるとより効果が有る」ということです。ここでもインクレチンが関係しています。ご飯より先に魚(肉)を食べたほうがインクレチンが早くかつ多く分泌されるのです。 私は食事は楽しく食べるのが一番と思いますが、水溶性食物繊維のおかずを1品増やしたり、食事の順番を変えることで食後血糖が抑えられるのであれば試してみたい気もします。 最後にインクレチンに関連する薬について話します。現在多くのインクレチン関連薬が使用できるようになりました。 インクレチンのように働く薬(ビクトーザー・バイエッタ・リキスミア・トルリシティ等)やインクレチンの分解を阻害する薬(ジャヌビア・グラクティブ・トラゼンタ・エクア等)があります。 2009年頃より使用されていますが、これらの薬の効果を検証すると薬の効きが悪くなる人がいることが判明しました。それらの人は体重が増えて肉を多く食べる傾向がありました。薬が効いている人ほど魚を多くて食べていることもわかりました。インクレチンは食べたものが通過する腸から出るホルモンですから食生活の影響が大きいのも当然です。 食事時間の規則性や、食事のカロリー・バランスに加えて食べる順番や水溶性食物繊維1品追加できたら理想ですが、実践可能なことを1つでも試してみたらどうでしょう。
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