「平成29年アメリカ糖尿病学会」に参加して 2017.7.20 開催地はアメリカ西海岸最南端のサンディエゴです。成田から飛び立ち12時間で到着しますが、日夜逆転です。サンディエゴは1542年にスペイン宣教師により切り開かれ、スペイン人、メキシコ人とインディアンが居住していました。その後アメリカ開拓民が入植し港を開き、軍港として繫栄し今はミサイル艦隊が寄航しています。岸壁には第2次世界大戦で日本の真珠湾攻撃で活躍したミッドウエイ航空母艦が停泊し、博物館に変身して貢献しています。 さて前置きが長くなりましたが、学会場は途方もなく大きく横幅300m位、奥行き200m位あるコンベンションセンターで、300m先の人の見分けがつきません。 発表演題数2600位で世界中の研究者が参加しています。 私は糖尿病の病状が悪い人と良い人では血糖値のヘモグロビンA1c(A1c)への係わりが異なることを発表しました。内容については日を改めてお話します。 2009年から作用機序の異なる多くの新薬が発売され、新薬ブームが続きました。 今年の学会ではひと段落したのかあまり見られません。糖尿病の広い分野にわたる研究報告に戻った感じがあります。 まず初めに、インスリン生成分泌するB細胞の研究が目立ちました。B細胞の発生、成長、変異、老化の経過及び活性化など、つまりB細胞の再生化を計っている研究なのでしょう。 アメリカは今3人に1人が肥満で、肥満が大きな社会問題となっています。街に出ると子供の肥満が目立ちました。恐らくヒスパニック系の人種が多いからでしょうね。肥満の生理学から始まり、肥満と癌、糖尿病との関係、肥満の治療とくにSGLT2による治療研究が目を引きました。 先月の掲示板にも載っていたグルカゴンの生理学、グルカゴンの善と悪、グルカゴンの薬理作用の演題が出され、いよいよグルカゴンの臨床が始まってきた感じがします。グルカゴンは膵臓のランゲルハンス島のA細胞から分泌され血糖値を上げる作用を担っています。従って血糖値はインスリンとグルカゴンの協同作業で調節されています。血糖値をインスリンの作用効果だけで治療していくのは片手落ちです。しかしグルカゴン分泌やその作用効果を抑えてしまうと、今度は血糖低下している時は危険です。 最後の話題としてCGM(皮下持続血糖測定)の使い方、データの読み方のシンポジュウムがありました。血糖測定もきめ細かく調べる時代になったようです。その1例として睡眠時無呼吸症候群のCGMは睡眠中の血糖変動の著しいことが示されました。手術中のCGMも示されましたから、マラソンや水泳中、さらに アメリカ糖尿病学会でいつも感じることですが、アメリカ人の度量の広さと深さには計り知れない超大人的感覚があるように思いました。 医師 佐々木 嵩 |