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物を見るということ

皆さんは意識せずに物を見ていますが、物を見るために眼はいろいろなことを行っています。

まず見るべき物に眼を向けなければなりません。すなわち眼を動かすわけです。その時両眼共同運動と言って二つの眼は同じ方向を向きます。当たり前のように感じますがこれは非常に重要で、右眼と左眼が別々の方向を向いてしまうと物が二つに見えたりします。それと同時に眼の動きを止めます。元々眼というのは小刻みに震えているものなのですが、それだとピントをきちっと合わせることができなかったり、ひどくなるとめまいを起こしたりするので、眼の動きを止めるわけです。次にピントを合わせなければなりません。ピントを合わせるためには、眼の中にある糸より細い筋肉で眼の中にある水晶体という凸レンズの厚みを厚くしたり薄くしたりします。更に近くを見るときは瞳孔(ひとみ)の大きさが大きくなり遠くを見るときは小さくなります。それと同時に明るさの調節もします。明るいところでは明るさに対する反応を鈍くして眩し過ぎない様に、暗いところでは反応を敏感にして暗くてもよく見えるようにします。これらのことを瞬時によどみなく行っているのです。また、黒目の部分・ひとみ・瞳の奥の水晶体(凸レンズの部分)・眼の中がすべて透明であり、網膜(眼の奥の膜)・視神経・頭の中の物を見るのに関する部分全てが健康でなければなりません。どれ一つ欠けても物をきちんと見ることはできません。

では、糖尿病になるとどうなるか?今言ったすべての部分が悪くなる可能性があります。その中でも網膜(眼の中)が悪くなってしまうのが糖尿病網膜症で、悪くなると元には戻りません。よく視力が落ちるという表現を使いますが、眼鏡をかけてあるいは眼鏡の度数を上げると見えるのは、視力が落ちたとは言いません。視力が落ちるというのは、眼鏡をかけようが眼鏡の度数を上げようが視力が上がらない、物が見えないという状態を視力が落ちると言います。糖尿病網膜症になると、その様なことになってしまいます。そうならない様に血糖値の管理を頑張りましょう。

最後にもう一つ。眼が老化するとどうなるかをお話しておきます。眼が老化すると先にも言った眼の中にあるピントを合わせるための筋肉が弱ってきます。年を取ると、体の中の筋肉すべてが弱っていき、眼の中の筋肉も弱ってしまい、老眼になります。また水晶体(凸レンズ)が濁ってきます。これは眼に限らず物でもなんでも同じです。物を買ってすぐの時はピカピカ新品ですが、使っていくにつれて傷もつくだろうし汚れ・くすみも出できます。この水晶体が濁ってしまうのが白内障です。老眼になったら老眼鏡、白内障になって視力が落ちたら・不自由になったら手術を受けます。薬では治りません。それは若返りの薬はない・老化を止めることはできないと言っているのと同じです。

医師 永坂 嘉章

   

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