足の動脈硬化(閉塞性動脈硬化症)について
2018.4.19
糖尿病の合併症の中でも動脈硬化は、全身の血管に起こり様々な病気の原因になります。
足の動脈に動脈硬化が進んで狭くなるか詰まるかして、足を流れる血流が不足して障害を起こす病気が「閉塞性動脈硬化症」です。
中年以降、特に50歳以上の男性で喫煙者に起こりやすいとされています。症状は足が冷たい、しびれる、痛い、足の色が悪い(白っぽい)、傷が治りにくいなど様々です。最も典型的な下肢症状は間歇性跛行(かんけつせいはこう)と呼ばれています。これは「一定の距離を歩くとふくらはぎなどが痛くなり歩けなくなるが、しばらく休むとおさまってまた歩けるようになる」という症状です。病気が進行すると、安静にしていても足が痛むようになります。更に進行すると足先が腐ってしまう(壊疽)こともあり、最悪の場合は足の切断に至ることがあります。
間歇性跛行は骨(脊椎)の病気である腰部脊柱管狭窄症でも見られますが、こちらが原因の場合は前屈みになったり座ったりすると痛みやしびれが楽になり、また歩けるようになるという閉塞性動脈硬化症の症状とは異なる特徴があります。
足の血管病が疑われる場合、まず足の動脈の拍動を調べることで確認します。病気の部位より先の動脈の拍動が触れにくくなります。スクリーニング検査としてはABI検査が有用です。これは腕と足の血圧を測定し比べることで、下肢の血流低下の程度を確認します。短時間で済み、痛みもありません。当院でも糖尿病の方には年一度のABI検査をお勧めしています。異常が確認されると下肢エコーやCT検査で血管の状態を評価し診断が確定されます。
治療は日常生活の改善、中でも禁煙が重要であり、糖尿病、高血圧、脂質異常症の管理を行い、軽症のうちは運動療法(運動すると血行が良くなります)や薬物治療(抗血小板剤、血管拡張薬)が中心となります。これらの治療で十分な効果が得られなかった場合には、血管内治療(カテーテル治療)や外科治療(バイパス術)が行われます。血管の状態にもよりますが、最近はカテーテルによる血管内治療が盛んに行われています。
予防には、足を清潔に保つ、保温に気をつける、ケガに注意するなど足のケアが重要です。
閉塞性動脈硬化症は、それ自体の予後は比較的よいとされていますが、足病変がある場合は心臓や脳の血管病(狭心症、脳梗塞など)を合併することが多く、他の血管病にも目を向けて精査を進めることが重要です。
医師 石井
勝久
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